♯2 風紀ですか。③
やっとキャラが増えてきました(^^*
サナさんが生徒会室の大扉を開けるとすぐ、俺の前に影が下りた。
見上げると、大柄な男がどや顔を浮かべて俺の前に立っていた。
見覚えのある顔だ。たしか、始業式で話をしていた、生徒会長。王道学園らしく歓声が上がっていたな。
金に近い黄土色の髪を短くそろえたスポーツ系の美形だろう。きりっとした眼もとに、何やら黒い刺青が入れられていた。この学校刺青まで入れていいんだ。
「……なんか言えよ」
無言で観察していた俺に、じっと見下ろしていた生徒会長は言った。
なんかって言ったって、あなたの方が先輩じゃないですか。でも言えって言うなら言うけどさ。
「では、どいてくれませんか?前が見えません」
「あれ?その声、辰巳?」
生徒会長の後方、生徒会室の中から見知った声を聞き、俺は体をずらした。
「アセラ?あれ?生徒会だったの?」
「うん。学校案内終わったんだね。よかった」
こちらに寄ってきてふわっと微笑んだアセラに、俺も無意識に笑みになっていた。
「俺を無視するな」
「会長なんで辰巳呼んだんです?」
「……会長が呼んだんですか?」
それならそこをどかなくともいいから、早く用件を済ましてほしい。アセラも知らないとは、個人的なものだろうか。
そう思い、俺は生徒会長に向き直った。
そして目に映ったものは――顔。目と鼻の先に生徒会長の顔があって、俺は反射的に身を引こうとして、叶わなかった。
「わっ」
片腕を思いっきりひっぱられ、バランスを崩して近づいたのは吸い込まれるようなブラウンの瞳と刺青。
あれ、このままいったら――
「ッッ!?」
「でっ!!」
勢いに任せて足を踏んでやったら、生徒会長は変な声を出して上に飛んだ。カエルかカエル。威厳はどこにやら、吹くのを何とかこらえた。変なことしようとすっからだ。
にしても、吃驚した。
「ごめんね。会長少しでも顔がいいとすぐに手を出そうとするから」
「アセラが謝ることじゃないよ」
そうか、遊び人ってやつなのか。
そんなに飢えているわけでもあるまいし、なんで俺にしようとするかな。いたって平凡なのに。
「おま、この俺に向かって足を踏むとはっ!」
「あなたが悪いんじゃないですか?用がこれだけなら俺は帰りたいんですが」
「なんだとっ!この俺が直々に呼んでまd「ディル、黙って」……」
完全に切れてしまっていた生徒会長を諌めたのは、以外にもイズミさんだった。一発で黙るとかすごいな。生徒会の影の権力者的な?
「辰巳君」
「はい」
呼ばれて顔を向けると、イズミさんは昨日と変わらない柔らかな笑みを浮かべていた。ただそこにうっすら黒いものが見えるのは、気のせいだと思いたい。
「今日呼んだのはそこにいるバカが会いたがっただけです。すいません、そこのバカが」
「は、はい」
気のせいではありませんでした。
こえぇぇぇぇ!!
イズミさんこえぇ!
こんな人だったとは、人は見かけによらないもんだ。うん。
もう背中ピリピリするよ。
完全におとなしくなっている生徒会長がなんだかかわいそうになって来た。
「あのー?俺の存在無視ってないかな?イズミちゃん」
いきなり声がして、肩が跳ねるほぼ大げさに反応してしまった。
声のした左側を見ると、セミロングの赤髪が特徴的なかなりの美形が立っていた。その後ろには背を向けたソファーがあるので今まであそこにいたんだと思う。ヘラっと笑って近寄って来る彼は、いかにもなチャラ男。ちょっと女よりな、でも美人ではなく美形。そんなあいまいな表現しかできないが、紛れもなく今まであった誰よりもきれいな顔をしていた。
俺はその場で言葉を失った。
この世界美形の頻度高すぎるよ。絶対。
「別に忘れていたわけではありませんよ?あなた寝てたじゃないですか」
「だって話に混ざれそうにないんだもん」
彼はわざとらしく口を尖らせて言った。
……なんていうか、きっと自由な人なんだろうな。
何となくそう思って、そのまま見つめていると、不意に目があった。
ちょっと驚いて体をこわばらせてしまったのがばれたのか、彼はくすりと笑う。うわ―色っぽいなぁ。
「辰巳君、だったよね?じゃー、タツみんでいいや。俺はクラウ・フィシファルってゆーの。同い年だからクラウでいいよ―」
「……よろしく」
同い年か。16でこれだけの色気を出すとかもう神の所業だね。あれ、でもこの世界の神ってだいぶ自分勝手じゃなかったっけ?
「イズミちゃんの言うように今日はもう用事ないから、戻って大丈夫だよ。またねー」
「僕も戻るよ」
なんかいろいろ流されて、俺はアセラに連れられて生徒会室を後にした。
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