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黒龍の誓  作者: 函南
3/3

 別に制服のポケットに入れている自身の携帯を取り出し確認しても良かった。だが、開いた瞬間に取り上げられてしまうことも考えられたのだ。

「時間?」

 松本は智樹に確認するように告げる。智樹がその言葉に一拍遅れながら頷くと、松本は口調を変えず一成を呼んだ。

「今何時だ」

「……今は、四時半ですね」

 初めて一成の声を聞いた。いや、初めから松本さんしか喋ってなかったんだけどね。

「四時半だそうだけど、智樹くんは何か用事があるのかい?」

「い、いえ。よ、用事というほど、では」

 六時すぎたら門限なんですといって逃がしてもらえないだろうか、とか別に考えてないです。それにしても、四時半、とは先ほどから全然時間が経っていないじゃないか! 嫌な時間ほどゆっくり過ぎるという言葉はどうやら本当らしい。


「そう? ならいいんだけど」

 深くは追求しようとしないこの男の考えていることも怖いが、追及されなかっただけましだ。

 智樹がばれないように小さくため息をつき、またもや小さくなって俯いた瞬間、声を聞いてない最後の一人、荘子が口を開いた。

「松本さん、あと二分ほどで到着します」

 荘子が到着まであと数分だと告げたが、松本はそれに返事をしない。先ほどまでの智樹ならやはり松本だけは書くが違うのだなとびくびくしていたところだろうが、生憎今の智樹荘子の言葉で頭が一杯なのである。


 ――――あと、二分ほどで到着ぅ!?


 どこについてしまうのか。ついに湾デビューを果たしてしまうのか。それとも、魚の餌に……。どちらにしろ門限を過ぎる頃には俺の命はないのだろう。


 智樹は今度こそ諦めよう、と小さく息を吐く。

 俺は魚、俺は魚、と検討違いのことをずっと考えていたら、車が停止した。ゆっくりだった、衝撃が全然ないように感じられたのはやはり高級車だからなのかと、少しだけ違うことを考えた。


 智樹はこのまま扉を開けて走り出せば逃げられるのではないだろうか、とも考えたが、その考えはすぐに一蹴された。一成の行動により。一成は少し体を動かした際に、胸元からなにか黒い物体を落とした。智樹はその物体が何なのか見えなかったのが、危険なものであるということは天性の勘で確信していた。勿論、その勘どおり危険なものであった。なんでもないことのように一成が持ち上げたのは、真っ黒で、光があたると少してかてかする掌より少し大きいソレ。所謂、拳銃という奴である。


 ギャー!

 智樹は心中だけで叫んだ。

 何故そんな危ないものを胸元に! いややっぱりヤのつく職業の方だから当然なのか!


 なんでもいいが、やっぱり智樹は家に帰りたかった。

 しかし逃げられるわけもなく、誰よりも先に下りた一成が松本の座る席の近くのドアを開く。やはり松本さんは格が違うんだな、とこの状況が全くの他人ごとのような目でその行動を見つめていた。

 が、松本はそんな智樹に向かって、にっこり笑う。またもやはたらく勘が訴える。「これは良くないことが起こるぞ! 逃げろ!」と。逃げられないから怯えることしか出来ない。


「さあ智樹君、ついたよ降りて」

 拒否はできないからな、という顔に、こちらもこの車にもいたくないので、渋々、ゆっくり降りてみる。

「……」

 ここ、知って、る。

 外なんて見えなかったからどのようなルートでここに来たのかはわからない。だから当然帰れないような知らない場所に連れて行かれるのだろうと思っていたのに、目の前にある建物を智樹は知っていた。

 しかし、だからといって安心できるわけでも、なかった。


「ここにね、智樹くんに用事があるっていう方がいるんだ」

 「~方」といういい方に松本の更に上なのだと知り、絶望。

 そりゃあ、この、大豪邸だから、な。

 家からは大分遠い場所だが認知していたこの場所。その理由は至極単純で、この目の前にある建物が有名だからである。

 「ヤっさんの家」とふざけて友人が呼んでいたのを思い出す。

 まさしくこの豪邸は「ヤのつく職業の方が住む家」のようである。




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