表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄のライブ配信サバイバル:最底辺のクズ運営が、絶望のアイドルをプロデュースして世界を炎上させるまで  作者: 伝福 翠人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

第9話 嘘が暴かれる時

肺に流れ込んできたのは、排気ガスと湿った雨の匂い。


地獄の焼けるような空気とは違う、ひどく「現実的」な不快感だ。


気がつくと、俺たちは渋谷スクランブル交差点の真ん中に立っていた。


色とりどりの傘が、無機質な波となって俺たちの体をすり抜けていく。


「……あ」


隣でミウが、息を呑んだ。


彼女の視線の先。ハチ公口の巨大ビジョン。


『追悼:国民的アイドル、星野ミウ。その輝きを忘れない』


皮肉なものだ。


死んでからの方が、生きていた時より「清純派」として扱われている。


そしてその横には、新しいアイドルグループの広告。


センターに立っているのは、かつてミウの背中を追っていたはずの、パッとしない後輩だった。


「ひどい……私、いなかったことにされてる」


「いいや、違うな。お前は『最高の踏み台』として、死んでからも利用されてるだけだ」


カナタは冷たく吐き捨て、スマホを掲げた。


Inferno Live、起動。


地獄での死闘を経て、俺の指先は震えを止めていた。


「おい、家畜ども。……約束通り、お礼参りに戻ってきてやったぜ」


【現世配信:開始】


【同接:3,000人……5,000人……】


画面の向こう側で、現世の人間たちが気づき始める。


SNSに拡散される「#星野ミウ生存説」「#地獄からの配信」。


野次馬が野次馬を呼び、スクランブル交差点の歩行者たちが、次々とスマホを取り出す。


「……なんだ、あれ?」


「AR……? いや、ホログラム?」


視線が集まる。


その数に比例して、透き通っていた俺たちの肉体に「重み」が戻り始める。


フォロワーと注目。それが、この現世における俺たちの「受肉」の燃料だ。


「行くぞ、ミウ。まずは、お前の喉を潰し、俺を過労死させた『ゴミの掃除』からだ」


向かったのは、駅から徒歩数分の場所にあるビル。


かつての勤務先。そしてミウをゴミのように捨てた『シャイニング・エージェンシー』。


ビルのエントランスから、一人の男が出てきた。


高級なスーツを纏い、新人の少女に鼻の下を伸ばしている。


プロデューサー、佐伯。


ミウに捏造スキャンダルを叩きつけ、俺を会社に縛り付けて死なせた元凶。


「……あいつ」


ミウの指先が、怒りで黒く染まり始める。


地獄で培った殺意が、現世の物理法則を浸食していく。


「待て。ただ殺すんじゃ、エンタメにならねえ」


カナタはドローンカメラを佐伯の顔面に肉薄させた。


配信画面には、怯える佐伯の顔と、背後に浮かぶ「黒い影」としてのミウが映し出される。


『うわ、佐伯じゃん』


『コイツが黒幕だったの?』


『やれ! 復讐しろ!』


同接が1万を超えた。


瞬間、俺の手が、佐伯の肩をガシリと掴んだ。


「――よぉ。久しぶりだな、プロデューサー」


耳元での囁き。


佐伯が凍りついたように動きを止める。


誰もいないはずの空間から、死んだはずの部下の声が聞こえる恐怖。


「な……な、んだ……? 誰だ……っ」


「お前の隠してる『嘘』。今から世界中に、生配信ライブしてやるよ」


カナタのスマホ画面に、赤い通知が躍った。


【ギフト:『真実の暴音(音響トラップ)』を錬成】


だが、同時に画面の下端で不穏な弾幕が流れ始める。


『待て、この運営のカナタって奴、昔……』


『思い出した。コイツ、5年前のチケット詐欺事件の主犯だろ?』


過去。


俺が「運営」に回る前に切り捨てたはずの、暗い影。


復讐のステージに、予期せぬノイズが混ざり始めた。


「……チッ。どいつもこいつも、他人のアラ探しだけは一流だな」


カナタの瞳に、極寒の光が宿る。


自分自身の「嘘」と「過去」。


それらすべてを飲み込んででも、このライブを完遂させる。


「面白くなってきたじゃねえか。……全部、暴いてやろうぜ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ