表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄のライブ配信サバイバル:最底辺のクズ運営が、絶望のアイドルをプロデュースして世界を炎上させるまで  作者: 伝福 翠人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/12

第5話 廃課金者の寵愛

焦げた肉の臭いが鼻腔を突く。


巨大な怪鳥が消散した後の、コンクリートの廃墟。


瓦礫の陰で、ミウは血と泥に塗れた膝をきつく抱え込んでいた。


俺を見る目。明確な拒絶。


口を開けば罵倒が飛んでくるだろう。構わない。そういう「ギスギスした裏側」も、リアリティショーの立派なコンテンツだ。


手元の画面。


【同接:820人】


数字は高止まりしている。先ほどの「劇的な救出劇」の余韻。


いい客引きになった。だが、ここからが本番だ。


無課金の野次馬を1000人集めるより、狂った金づるを1人釣り上げる方が効率がいい。


その時、スマホの画面が暴力的な虹色にフラッシュした。


【スーパーチャット:1,000,000円(ゴールド・クラウン相当)】


【ユーザー:『サディスト・マム』】


『ミウちゃん、見つけたわ。怪物のど真ん中で、デビュー曲を全力で歌って。出来なきゃ、隣の男の首を吹き飛ばす』


鼓膜を殴るようなシステム音。


頭上の虚空に、黄金に輝く王冠のホログラムが浮かび上がった。


太客パトロン。しかも、最悪の部類の「厄介オタク」。


同時に、弾幕の質が一変する。


『マムだ!』


『百万の投げ銭とかヤバすぎ』


『てか隣の男うざい。ミウちゃんから離れろ』


『クズ男死ね』『死ね』『燃えろ』


嫉妬。悪意。画面越しの身勝手なルサンチマン。


直後、俺の首筋に焼け焦げるような激痛が走った。


「――ッ!?」


チリッ、と皮膚が黒く炭化する。


火の粉。何もない空間から生まれた「悪意」の結晶が、俺の肉体を物理的に焼き払い始めている。


炎上デバフ。視聴者のヘイトが閾値を超えると発生する、プラットフォームのペナルティ。


痛い。神経を直接火箸で弄られているような熱。


だが、気付いた。


皮膚が焼ける痛みに比例して、心臓の鼓動が爆発的に加速している。


血液が沸騰し、筋肉が張り裂けんばかりに膨張する。


【炎上ブースト(被ダメージ変換):筋力・魔力 300%アップ】


悪意は、最高の燃料だ。


痛みを噛み殺し、俺は立ち上がった。


首から煙を上げながら、怯えるミウの腕を乱暴に掴む。


「立て。仕事の時間だ」


「な、なに……首、燃えてる……ッ」


「客のオーダーだ。広場の真ん中で歌え。一番愛想の良い、アイドルの顔でな」


引きずり倒すように、彼女を瓦礫の広場の中央へ放り投げる。


血の匂いに釣られ、廃墟の奥から十数匹のレイス・ハウンドが這い出してきていた。


包囲網。逃げ場はない。


「む、無理よ! こんな所で歌えるわけ……ッ!」


「歌え!!」


俺の怒声。


ミウの肩がビクッと跳ねる。


首筋の炎を無理やり左手で握り潰し、その「熱」を右手のスタンバトンへ転装する。


青白い電撃に、赤黒い業火が混じる。


「お前の声帯を金に換えろ。死にたくなければ、笑って歌え!」


迫る怪物の群れ。


極限のストレス下。ミウの唇が震え、やがて、引きつったような笑みが張り付いた。


狂気。生き残るための防衛本能が、彼女から「人間」を剥ぎ取っていく。


震えるソプラノ。


崩壊した世界に、不釣り合いなほどポップなメロディが響き渡る。


俺はスキル『演出(Lv.1)』を起動した。


視覚の補正。音響の増幅。


ミウの歌声を、ただの空気の振動から「物理的な衝撃波」へと変換して周囲に撒き散らす。


音圧で怯んだ怪物の群れ。


そこへ、俺は炎を纏ったバトンを薙ぎ払った。


爆炎。


アンチの悪意で作られた業火が、扇状に広がり、怪物の肉体を消し炭に変えていく。


ミウの歌声がBGMとなり、殺戮のステージが完成する。


歌が終わる頃には、広場に立っているのは俺と彼女だけだった。


【ユーザー:『サディスト・マム』から追加ギフト】


【レア装備:電子の処刑衣(電磁バリア)を錬成】


虚空から落ちてきた漆黒のコート。


それを肩に羽織り、俺はカメラを見下ろした。


「客の注文通りだ。楽しんでるか、マム? アンチの連中も、いい火薬だったぜ」


挑発。


画面の向こうの100万の重圧すら、俺のステージの小道具だ。


振り返る。


歌い終えたミウが、その場にへたり込んでいた。


俺を見るその瞳孔は極限まで収縮し、呼吸を忘れたように震えている。


憎悪ではない。


俺という「底知れない怪物」に対する、純粋な恐怖。


それでいい。


怯えろ。お前が絶望するほど、この配信ショーの価値は上がっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ