第4話 スキルの応用と戦術
森を抜けたレミリアたち「赤の刀剣」は、
次の任務で中規模のダンジョンに挑むことになった。
報酬は少ないが、敵の種類が多く、戦術が問われる場所だ。
「ここから先は油断するな」
レッドが仲間に向かって声を掛ける。
ボルトスは盾を構え、キースは魔法陣の準備を始める。
ブルーは影の中に身を潜め、敵の動きを探る。
レミリアも杖を握り、心を落ち着けた。
前回の戦闘で「倍率」の力を理解した今、
彼女は自分のスキルをさらに応用できると感じていた。
「倍率……ただ回復に使うだけじゃない」
心の中で呟き、使い方を思案する。
最初に姿を現したのは、鎧をまとったゴブリンの集団だった。
ブルーが素早く後方から切り込み、
ボルトスが正面を守り、キースの魔法が炸裂する。
しかし、ゴブリンたちは何度も再生するように立ち上がる。
「このままじゃ攻撃が無駄になる……!」
レミリアは杖を掲げ、倍率を宣言する。
「次はアンチヒール、マイナス二倍!」
仲間の回復ではなく、敵の再生能力を抑えることに挑戦した。
光がゴブリンたちを包むと、彼らの傷は治らなくなり、
攻撃に耐えられなくなる。仲間たちの攻撃が的確に決まる。
「なるほど……スキル次第で戦況を操作できるのか」
レミリアは新たな戦術の可能性に胸を躍らせた。
森の奥に進むと、さらに強力な敵、二つの頭を持つトカゲ型モンスターが現れる。
ブルーが身軽に跳び回り、二つの頭を翻弄する。
ボルトスが盾で正面を封鎖し、キースの魔法が二つの頭に直撃する。
レミリアは「倍率」を宣言し、キースの攻撃魔法を強化した。
火力が跳ね上がり、二つの頭が炎に包まれる。
さらに、彼女は回復魔法も同時に工夫する。
仲間の体力を守りながら、敵の攻撃を受け止めるタイミングを計算する。
「これなら、私一人でも戦況を変えられる」
初めて、ヒーラーとしての新しい役割を理解した瞬間だった。
単なる回復役ではなく、戦術の要として戦えるのだ。
戦いが終わる頃、森には静けさが戻った。
倒れたモンスターの影に、夕日が差し込み、光が揺れる。
仲間たちは息を整え、互いに笑顔を交わす。
「さすがだな、レミリア」
レッドが杖を軽く叩き、肯定の目を向けた。
「まだ完璧じゃありません。でも、使い方次第でこんなに変わる」
レミリアは少し微笑み、杖を握り直す。
仲間たちも、彼女の成長を肌で感じたようだった。
ギルドへ戻る道すがら、レミリアは考えた。
『スキルは弱くても、工夫すれば戦局を支配できる』
仲間を守るだけでなく、戦術の幅を広げられる自分。
その可能性に胸が高鳴る。
森を抜け、村の空に夕日が沈む。
レミリアは杖を握ったまま、深呼吸する。
光は小さく揺れ、まるで自分の意思を映すかのようだった。
「これから、もっと仲間を助けられる……」
彼女の小さな希望の光は、
単なる冒険の始まりではなく、
戦術的ヒーラーとしての新しい物語の扉を開く光でもあった。
レミリアは固く心に誓い、仲間と共に歩き出す。




