3 ソフィア黒幕説
頭の中にAIがあることを知った彼女は、とりあえず聞いてみたいことがあった。
それはゲームプレイ時に感じた「実はルクシアは冤罪ではないのか?」ということについてだ。
ルクシアの断罪イベントは「王太子ルートの3年目3月限定イベント」だ。あのとき画面に流れたテキストは、ただの“悪役の末路”だった。
断罪イベントの舞台は、17歳となった聖女が参加する卒業の儀。
大神殿奥の祭壇で筆頭聖女であるルクシアが“神の祝福”を受けるが、レイナード王太子がそのタイミングで、「真の聖女は別にいる!」とソフィアと寄り添うようにして現れる。
「ルクシア・ウィンターローズ。“偽りの聖女”である君が“神の祝福”を受けることは許されない。そしてこの場を借りて、国民を欺いたことについて、真の聖女ソフィアに対する陰湿な仕打ちについて謝罪せよ」
「殿下……お待ちください。私は何も偽ってなどおりませんし、ソフィアさんに陰湿な仕打ちだなんて……間違いではございませんか?」
ルクシアは必死に弁解したが、これまでのソフィアに対する嫌がらせを証言する者が次々にやってくる。
そしてルクシアは、3年前に王の宝物庫から盗み出した太古の魔法具を使って神秘の力を増幅させていたと告発され、ルクシアのネックレスを大司教が確認して告発が正しいことが判明する。
クライマックスは長年誰も鳴らすことができなかった大神殿の鐘を、真の聖女であるソフィアが神秘の力で鳴らす場面だ。
「ルクシア・ウィンターローズ……君との婚約を破棄する! そして私はこの場でソフィア・マードリットとの婚約を宣言しよう!」
ルクシアは崩れおち、来賓者のルクシアへの罵倒のセリフ、大司教がソフィアの力に感嘆するセリフ、攻略対象者たちが王太子とソフィアを祝福するセリフなどが続き、レイナード王太子からソフィアへの甘い言葉で締めくくられる。
これがノベルゲーム『ラピスガーデンの聖女』の王太子ルートのラストだ。
冤罪ではないかと感じたのには理由がある。
まずルクシアのソフィアに対する「イジメ」だ。ルクシアはちょっと言い方がキツいだけで、礼儀知らずの田舎娘にたいして侯爵令嬢ならば当然といえる態度にも思えた。
もうひとつの理由は1年目のあるバッドエンドだ。
王の宝物庫の前でソフィアはルクシアと遭遇すると、泥棒だと騒がれて捕らえられてしまうので、これをうまく回避しないとバッドエンドとなる。
そして回避の2年後に「ルクシアが宝物庫で何かをしていた」と王太子に伝えて、それが最終的に断罪イベントへとつながる。
しかし、ルクシアが宝物庫の前にいた理由が不明なように、ソフィアがいた理由も不明で、そこがモヤっとしていた。
彼女はMOGに、自分が疑問に感じた部分を伝えた。
《ワタシはゲームはできませんが、ネット上に複数の考察があるようです。まとめますか?》
《うん、お願い》
《バッドエンドのソフィアの手にペンダントのようなものが握られていた。またソフィアは断罪イベントの前に宝石職人から品物を受け取っているが、それが何なのかが明かされていない。考察では宝物庫から魔法具を盗んだのはソフィアで、宝石職人に作らせたレプリカをルクシアに身につけさせることで濡れ衣を着させた。ソフィアは隠し持っていた本物のペンダントで大神殿の鐘を鳴らした、という説が出ています》
《たしか……ルクシアはペンダントは王太子から届けられたものだと言い、王太子は「私の名前まで使って嘘を重ねるとは、どこまで性根が腐っているんだ」とルクシアを罵倒した。でも、もしソフィアが誰かを使って王太子からの贈り物だとルクシアにレプリカのペンダントを届けさせたとしたら……ルクシアは喜んで卒業の儀で首につけるはず……》
《発売からさらに時が経てば「ソフィア黒幕説」のもっと確定的な証拠も発見されるかもしれませんが、ワタシがアクセスできるのはあなたが事故にあうまでのネットの情報なので、これ以上は不明です》
「ソフィア黒幕説」が事実なら、王太子もとんでもないのと結婚することになるけど……と彼女は思った。




