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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第19章「遺構の記録と遺されたものたち」

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開かぬ扉──スカルナの果てに

 静まり返るスカルナ地下の通路。

 まるで遺構そのものが、息を潜めて次なる来訪者を待っているかのようだった。


 ユーリたちは、補給区画を後にし、アリエルの案内でさらに奥へと足を進めていた。


「ここが……地下空間への接続口です」

 アリエルが淡々とした声でそう告げ、目の前の巨大な隔壁を指し示す。


 金属質の扉には幾重もの錠前と認証装置が備えられており、その中央には淡い赤のリングライトが脈動していた。


「最深階層……ここから先に、何があるんだろうな」


 ユーリが独り言のように呟いたその時、隣から小さな声が上がった。


「……ねぇ、ユーリ」


 それはルシアだった。肩のあたりに浮かぶ粒子の姿は、いつもより少しだけ揺らいで見える。


「何だ?」


「……ユーリが人型の私を見て、がっかりしないかなって思って」


「え?」


「アリエルみたいに実体化できるのよ、私も。でも……スカルナの中じゃ、ちょっとタイミングが悪い気がして。だから、私も外に出たらにするわ」


 ユーリはその言葉に思わず笑った。


「何言ってんだよ。がっかりするわけないだろ。……楽しみにしてるよ」


「ふふっ。じゃあ、期待に応えないとね」


 短いやり取りのあと、アリエルが認証パネルの前に立つ。


「アクセスを試みます。演算キー:スカルナ・コア接続コード/ID:ALV-04付属認証にて照合」


 ホログラムが広がり、複数の認証手順が高速で走査されていく。


 やがて──


 《ACCESS DENIED:AUTHORIZATION LEVEL INSUFFICIENT》

 《扉は封鎖されています。追加認証情報が必要です》


 機械的なアラート音と共に、赤いリングライトが一度だけ強く明滅し、静かに消えた。


「……ダメか」


 ユーリが魔導書を取り出し、同じように端末にかざしてみる。


 しかし、浮かび上がる文字列は同じだった。


 次にセラが、長杖リリィ・アリアを構えてアクセスを試みた。

 彼女のペンダントも淡く光を放ったが――結果は変わらない。


 《ACCESS DENIED:AUTHORIZATION LEVEL INSUFFICIENT》


 その事実に、誰もが息を呑んだ。


 しばらくの静寂のあと、ユーリがそっと魔導書を閉じ、低く呟いた。


「……スカルナ遺構。今回は、ここまでだな」


 ルシアも、アリエルも、何も言わずに彼の言葉を受け止めた。


 セラは少し残念そうに、それでも前を向いて言った。


「でも……今はこれだけのものを得られたし。きっと、また来られるよね」


「ああ。絶対に、また来よう」


 ユーリはそう約束するように言い、閉ざされた扉に最後の視線を送りながら、背を向けた。


 ――新たな力を手にした仲間たちと共に、静かに地上への帰還を始める。

 それは、次なる旅への序章でもあった。

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