扉の前にて──干渉の兆し
階段を降りきった先にあったのは、無骨で重厚な金属扉だった。
古代文明の技術によって造られたものだと、ひと目でわかる。
ユーリは小さく息を吸い、手にした魔導書を広げる。
そのページが、扉の縁に反応するように淡い光を放ち──
──その瞬間だった。
「っ……! 今、何か入ってきた……!」
ルシアが驚きと警戒で明滅した。
アリエルの瞳が薄く光る。
「解析開始。波形照合中……信号源不明。高エネルギー干渉を検出しました」
壁面の端末が一斉にノイズを発し、チカチカと明滅を繰り返す。
天井の照明が一瞬、明るくなり──すぐに暗転。
視界の端に、黒い“粒子”が浮かび上がる。
まるで闇が霧となって滲んでくるような、異質な気配。
「これ、魔力じゃない……魔素でも……ない……」
セラが長杖を握りしめ、後ずさる。
その肩にルシアが乗り、低く呟いた。
「……これは、情報干渉。私たちが呼んだんじゃない、向こうから来たのよ」
アリエルが小さく首をかしげた。
「受信強度、上昇中。……これは“通信”です。断片的なフレーズを検出──」
床にうっすらと光の文字列が浮かび上がる。
> 《…ALIV…》
> 《…EYES ON…》
> 《…HUMAN…》
「……生きている、監視されている……ヒトに対して?」
ユーリが読み上げると、闇の粒子が小さく揺れた。
「誰かが……いや、“何か”がこちらを“観てる”……?」
自身の皮膚の下に冷たい指先を這わせられるような、不快な感覚が背中を駆け上がる。
だが、それは単なる脅しではなかった。
「この空間……観測されてる。明確な“意志”を持った、何かに──」
ルシアの声が、かすかに震えていた。
ユーリは魔導書を閉じ、仲間たちに目を配る。
「落ち着け。まだ接触はしてきていない。……でも、向こうはこちらを知ってる」
扉の縁が再び淡く輝き、微かに音を立てて起動する素振りを見せる。
だが、完全には開かず、内部からの認証が必要であることを示す赤い文字列が表示されていた。
「これ……もしかして、向こうから鍵を“観測”されてる……?」
ユーリの呟きに、アリエルが短く応えた。
「高確率で、そうです。干渉元の存在は“この扉”に関係しています。……そして、私たちに“問い”を投げかけている」
誰もがその意味を完全には理解できず、沈黙が広がる。
だが、その場にいた全員が――自分たちは、確実に見られていると悟っていた。




