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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第14章「旅支度と“未来の遺産”」

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市場通り──旅支度という名の”デート”

 薬草舗の扉が静かに閉まり、エインクレストの市場通りへと続く小道に朝の光が差し込む。


「さてと……買い出し行こっか」


「うん、行こう!」




 セラは少しだけ頬を染め、ユーリの隣に並ぶ。手には小さな革袋──旅に必要な資金をきちんと分けて持ってきたらしい。




 ユーリの後ろでは、ふわふわと粒子を纏ったルシアがホバリングしていた。




「ちなみに言っておくと、あのアイテムボックス……」


「うん?」


「今入ってる荷物で、全容量の──そうね、ざっくり3%くらいしか使ってないわよ」


「……うそだろ」




 思わず振り返るユーリに、ルシアは自慢げに笑った。




「まだまだ詰め込めるってこと。シェルターには冷蔵も冷凍もあるから、生の野菜や果物も保存可能よ。キッチンも搭載されてるから、調理もできるわ」


「旅先で……料理、できるの?」


「う、うん……でも、でも……それって、私が作るってことになるのかな?」


「任せていいなら、喜んで」


「うぅ……やっぱりそうなるよねぇ……」




 セラは頭を抱えつつも、どこかうれしそうだった。




 * * *




 市場通りには、朝の喧騒が広がっていた。


 天幕の下には薬草、香辛料、保存食、革製の旅装、果物や干し肉など、旅人向けの品がずらりと並ぶ。




「まずは薬草……それと、保存の効く食材も。ユーリ君、こっちの軟膏もあったほうがいいよ」


「うん、了解。……これ、回復速度に影響ある?」


「あるある、特に浅い傷ならかなり早く癒えるよ」




 ユーリが財布を取り出しかけると、セラがぴしゃりと手を押さえた。




「今は私が買う番。割り勘って言ったでしょ?」


「お、おう……はい……」




 押し切られたユーリは小さくため息を吐きつつも、なんとなくそのやり取りが心地よかった。




 次に訪れたのは装備品の並ぶ露店。


「ユーリって、旅の服装あれでいいの?」


「まあ、動きやすいし……」


「ダメ!はい、こっち試着して!」


「へっ?」




 セラが手に取ったのは、深い緑を基調にしたロングジャケットと、機能的な黒のインナーセット。


「似合うと思うから、はい、試着室行って!」




 押し込まれたユーリが出てくると、セラがぱちぱちと拍手をした。




「おお……悪くない。うん、かっこいい」


「そ、そうか? なんか照れるな……」


「じゃあこれ、買いまーす!」


「お、おい!?」


「えへへ、今度は私の番ってことで!」




 逆にユーリが選ぼうとしたら、セラは真っ赤になって首を振った。




「えっ、わ、私の服は、ほら、予算が……っ」


「言い出しっぺがそれでいいのか?」


「うぐぅ……やっぱり私も選ばれるの、恥ずかしい……!」




 そのやりとりを見ていた周囲の店主たちから、ひそひそとした声が聞こえてくる。




「あら、いいわねぇ……」


「青春ってやつかしら」


「うちの息子もあれくらい素直になればいいのにねぇ」




 思わず顔を真っ赤にするセラ。ユーリはというと、案外平然としていて──




「……そんなに、変に見えるかな?」


「むしろ堂々としててずるいよ……!」




 言いながらもセラの声にはどこか笑みが混ざっていた。




 * * *




 昼過ぎ、市場の一角の果物屋でユーリが袋詰めのリンゴを手に取っていると、セラがぽつりとつぶやいた。




「……なんだか、初めてじゃないみたい」


「何が?」


「こうやって、一緒に歩いて、買い物して。昔からこうしてたような……そんな気がするの」




 ユーリは立ち止まり、隣に並んだセラの手をそっと見つめる。




「じゃあ、これから何度もやろう」


「……え?」


「旅支度も、街歩きも、いつか別の国でも──何度だって、一緒に」




 セラの目が見開かれ、ほんのりと潤む。


「も、もう……ずるいよ、そういうの……」




 小さくつぶやいたあと、セラはユーリの腕にそっと自分の手を添えた。




「じゃあ、今日の旅支度……最後まで、付き合ってもらうからね?」


「もちろん」




 まだ見ぬ旅路に向けて──二人の準備は、確かに始まっていた。

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