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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第13章「遺構の鍵と記憶の欠片」

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決意──そして次の遺構へ

 夕方の薬草舗。

 裏庭の木陰で、ユーリは旅装の準備を進めていた。ベルトにポーチを付け、ブーツの留め具を確認し、魔導書の防護ケースを肩にかける。




 その様子を、木戸からそっと覗いていたセラが意を決して声をかけた。




「ユーリ……。ねえ、私も、一緒に行っていい?」




 不意を突かれたユーリは手を止め、振り返る。




「セラ……」




「薬も道具も持っていけるし、回復魔法も少しなら使える。だから、きっと……力になれると思うの」




 その目はまっすぐで、不安もあるはずなのに、それ以上に決意がにじんでいた。




 だが、すぐ隣から、ゆっくりと紅のローブが揺れる。




 メイリンだった。

 彼女は口元に微笑を浮かべ、セラの背に手を添える。




「行きたいなら、行ってきな」




「えっ……!」




「薬草舗のことなら、あたし一人でもなんとかなるし、あんたの覚悟が本物なら止めはしないよ。……でもね」




 メイリンは、まるで母親のようにやさしい目で言った。




「命を投げ出すつもりなら今すぐやめときな。誰かの役に立ちたいって気持ちと、自分の命を粗末にするのは、まるで違うからね」




 セラは小さく目を伏せた後、顔を上げて深く頷く。




「うん……大丈夫。私は、ちゃんと帰ってくるよ」




 その横で、ユーリも静かに微笑んだ。




「ありがとう、メイリンさん。……セラ、一緒に来てくれるなら心強いよ」




「うんっ!」




 そのやりとりを見届けるように、ルシアの淡い粒子の光が空中を舞った。




「いい関係ね。どちらも、自分の足で立っている」




 ふわりとユーリの肩へと降り立ち、光が背中に沿って流れた。




「この世界はまだ、目覚めの途中。スカルナは、次の“鍵”を持つ地。……そして、あなたたちはすでに選ばれている」




 ユーリが魔導書を手に持ち、軽く頷く。




「なら、進むしかないな。──俺たちで、未来を繋ぐために」




 その言葉に、セラが隣で小さく拳を握った。




 そして、その夜。

 宿の部屋に戻ったユーリは、窓際に立って空を見上げていた。




 夜の帳が降りる中、月明かりに照らされた街は穏やかに眠っている。

 その景色の中に、旅立ちを前にした静かな決意が滲んでいた。




「……じいちゃん。俺、ちゃんと見えてきたよ。この世界の仕組みが、少しずつ」




 呟きながら、そっと魔導書を胸に抱く。




 背後から、ルシアの囁くような声が届く。




「……次の“扉”が、開くわ」




 ユーリは目を閉じて、その声を受け止めるように頷いた。




 ――旅は、再び始まる。

 そして、新たな遺構の謎が、待っている。


 

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