表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第2章「祖父の遺言とアイテムボックス」
5/169

祖父の遺言──継がれる希望と装置

 制御中核ユニットに触れると淡く発光し、空間に光の線が立ち上がる。


 その光はやがて輪郭を描き、やや背の高い老年の男の姿を形成した。


 深く刻まれた眉間の皺。白髪のポニーテール。まっすぐユーリを見つめる目。


「よぉ、ユーリ。……いや、“ユーリ”で合ってるか?」


 老年の男──エルド・アルヴェインは、かすかに笑った。


「もしこのメッセージが再生されているなら、君はもう“接続”に成功したということだ。……ならばまず、ようこそだな。我が孫よ」


 ユーリはただ、言葉を失って立ち尽くすしかなかった。


 それは間違いなく、物心ついた頃に村の者から聞いていた“祖父”の名だった。


「君がこれを見るのは、いつになるかは分からない。もしかしたら幼い頃かもしれないし、あるいは成人しているかもな……。だが、私は信じていた。君ならきっと、この遺産を起動できると」


 祖父のホログラムは軽く手をかざし、背後に幾重もの光のウィンドウを展開させる。


「これは、かつて残された技術のひとつ──“Chat Form”と呼ばれた汎用制御インターフェースだ。

 神でも、魔でもない。ただの機構……だが、私は思う。これは、世界を繋ぐ“声”だと」


 ユーリの胸が高鳴った。


 この世界の魔法とは、どこか仕組みが似ているようで、違う。そこには、明確な“論理”と“構造”がある──まるで、コードのように。


「……この星は、ずっと昔に“何か”を失ったんだよ。

 それを“滅び”と呼ぶ者もいれば、“再起動”と捉える者もいた。

 君が暮らすあの村の地中にも、かつての営みの痕跡が眠っているはずだ。

 私たちは、その上で暮らしている──気づかぬままにな」


「だが希望は残された。情報は、意志は、断片的でも残る。

 道具も、支援AIも、記録も──継ぐ者さえいれば、繋がる」


「私は願っていた。君が、それをただの“装置”としてではなく、

 誰かと何かを繋ぐ“意味”として受け取ってくれることを──」


 エルドのホログラムはふと、真剣な眼差しで前を見つめた。


「私は君に、この星の“本当の姿”を見てほしいと思っている。

 もし、君がそれを望むなら──これを託そう」


 光が集まり、ホログラムの胸元から金属質の装置がせり出してくる。

 まるで空間から取り出されたかのように── 一枚のカードが現れた。


 表面にはコードのようなラインと、淡く光るチップ。


 ユーリが手を伸ばすと、それはぴたりと掌に収まり、ぬくもりを感じさせた。


「このカードには、昔どこかで手に入れた古い装置を参考に、必要最低限の支援機能を封じ込めた。

 中身は……まぁ、君が開ければ分かる。時代を超えた“道具箱”さ。きっと役に立つ」


「君が旅立つときに不自由しないように──そう願って、私はこれを残した」


 ホログラムの祖父は、最後に微笑んだ。


「ユーリ。世界は君を試すだろう。だが恐れるな。知ることを恐れず、声を届けろ。……それが“Chat Form”の本質なのだから」


「では、またどこかで。私の、小さな希望よ」


 光が収束し、ホログラムは消えた。


 部屋には静寂が戻り、ただユーリの掌に残るカードだけが、小さく輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ