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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第13章「遺構の鍵と記憶の欠片」

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報酬と報告──ギルドの評価

 エインクレストの冒険者ギルド本館、その奥まった一室──

 執務室の中は、石造りの壁と古びた木製の書棚が並び、質実剛健な雰囲気に満ちていた。


 そこにいたのは、冒険者ギルド・エインクレスト支部のギルドマスター代理、ガンゾー。

 動きやすい黒革の戦装束を身にまとい、義手の金属音だけが静かに響いている。


 デスクの奥に腰かけるその大男を前に、ユーリは姿勢を正した。


 そのすぐ背後には、番人機構アリエルが静かに控えている。




「──森の汚染は、ノードと呼ばれる古代施設の暴走が原因でした」


 ユーリの報告に、ガンゾーは鋭い眼光を向けながらも、黙って耳を傾けている。


「該当ノードは“07”と識別され、管理AIが番人機構として現存していました。現在は暴走状態を解除し、安全モードに移行済みです」




 アリエルが一歩前に出ると、機械的な音声が執務室に響いた。


 "System status: Standby mode. Current directive: Escort and support."


「──彼女は今、安全待機中で、行動指令は“護衛と支援”とのことです」


「ふむ……通訳ご苦労」


 ガンゾーは顎に手を当てながら、アリエルの全身を観察するように見つめた。


「姿は人型だが、目の奥の光が妙に静かすぎる……機構というより、精霊に近いな」


「はい。内部構造は古代の演算体らしく……感情のような反応も一部あります」


「そうか」




 少し間をおいてから、ガンゾーは姿勢を正した。


「で、問題はもう一つあるな。──そのノードが、“どこ”にあったかだ」


 ユーリは一瞬ためらい、しかし意を決して告げた。




「……エインクレスト内部です。僕たちの拠点である、薬草舗の地下区画に──ノード07の制御中枢が存在していました」




 沈黙が落ちた。


 やがて、ガンゾーは深く息を吐いた。




「……そうか。ならば、場所の公開は不要だ」


「え……?」


「報告書には、“市内安全区画における発見”とだけ記す。詳細な場所は伏せろ」


 義手でデスクを軽く叩く音が、重く響いた。


「ノード本体が都市機構に組み込まれているとすれば、それを騒ぎ立てるのは危険だ。」

「この街にとって、ノードがどういう存在かまではまだわからん。」

「だが、あまりに注目されすぎれば技術屋や貴族、あるいは信仰国のやつらまで嗅ぎつけてくる。」

「そうなりゃ、お前の大事な場所は──潰される」


 ガンゾーの言葉には、長年の経験がにじんでいた。


「だから、“ノード制御区画を都市内部の安定拠点にて確保”ってだけに留めて、詳細は準機密扱いにする。……異議はあるか?」



「ありません。……ありがとうございます」



「メイリン嬢には、ギルドから非公開協定を提示しよう。都市のノード保守協力者として、正式に保護対象にする」


 ユーリは思わず表情を緩めた。


「……ありがとうございます、ガンゾーさん」


「礼などいらん。お前が命を張って繋いだ安全だ。ギルドはそれを守る」




 ◆ ◆ ◆




 執務の確認が終わったころ、扉がノックされ、カリナがファイルを抱えて入ってきた。


 柔らかなウェーブのかかった栗色の髪を後ろで束ね、やや控えめな化粧。

 落ち着いた声色と、凛とした所作がギルドの看板に相応しい。


「お待たせしました。昇格処理と任務評価、まとめが出ましたので──こちらに」


「……昇格?」


 ユーリがファイルを受け取ると、そこには【Rank: D → C】の文字が刻まれていた。


「汚染領域の原因解明、暴走機構の沈静化、制御権確保──十分すぎるほどの実績です。……おめでとう、ユーリくん」


 カリナがやさしく微笑むと、ユーリは少し照れながらも頭を下げた。


「ありがとうございます。……でも、僕一人の力じゃないです。みんながいてくれたから──」




 その言葉に、ガンゾーが立ち上がり、義手の拳を静かにユーリの肩に置いた。


「そうだ。その“みんな”を、大事にしろよ」




 金属の冷たさと、温かい意思がそこにあった。




 そして、再びアリエルが音声を発する。


 "Recognition acknowledged. Tactical record archived. Transfer complete."


「……あなたの評価を受理しました。戦術記録を保存し、任務報告は完了だそうです」


「ますます“相棒”ってわけだな」


 ガンゾーはアリエルを一瞥しながら、口の端をほんの少しだけ持ち上げた。


「……見事だったぞ、ユーリ。次は何を探す?」




 ルシアの光粒がふわりと肩先に舞い降りる。


「次の扉が開くまでは、ちょっとだけ休ませてあげて」


 その声は、どこか慈母のように穏やかだった。

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