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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第12章「森の中心と目覚めの番人」

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継承される鍵──遺構ネットワークの目覚め

 祠の地下施設に、再び静けさが戻った。

 番人機構は、安全モードに移行したまま、動かない。


 しかしその瞳──センサーの光は、確かにユーリを見ていた。赤く警戒色に染まっていたそれは、いまは淡い白光で、かすかに揺れている。


「コアの再接続、安定してる……今なら深層認証まで試せるかも」


 ルシアがユーリの肩越しに浮遊しながら言った。


「ほんとに……“通っちゃう”んだな、じいちゃんのID」


「あなたと遺構の“親和率”が高いのは、単なる偶然じゃないわ。これはもう、適性……というより、“選ばれた”ものね」



 ユーリは膝をつき、番人機構の胸部に手を当てた。


「再接続、進めるよ。ルシア、協調演算に入って」


「ええ。同期開始──」




 魔導書のスクリプトウィンドウが光を放ち、複数の構文行が自動的に入力されていく。




 >> Core_Sync: phase_2

 >> Deep_Link_Request(Guardian_Unit_07)

 >> Confirmed: Legacy_ID [Eld_Alvein.1]

 >> Designate_User: Yuri_Alvein

 >> Transfer: Sub_Node_Key




 ピッ、という小さな音。


 番人機構の胸部から、小型の立方体デバイスが現れ、音もなく浮かび上がった。


 光を帯びたその“鍵”には、古代語でこう記されていた。


[Node_Key_ID: 07-A]

(ノードキーID:07-A)


[Function: Sub-Network Access / Command Delegation]

(機能:サブネットワークアクセス/指令移譲)



「これって……ノードネットワークの、アクセスキー?」


「そう。大陸全体に広がっていた、古代通信・魔導制御ネットワークの一部……その“第7番目の区画”への管理権限。おそらく、君のおじいさんが一時的に所有していたものが、今──君に継承されたの」


 ルシアの声に、グレンとカイがざわめく。


「管理権限ってことは、ここ全部……?」


「今の段階では、“一部”。ただし──遺構に接続された中枢系や、番人ユニットの直接制御が可能なレベルよ」




 カプセルの背後の壁が、機械音と共に開いた。


 奥には、ホログラムパネルがいくつも浮かび、中央にある円形台座には、かつて誰かが立っていたような痕跡が残っていた。


「おそらく……この台座に立つことで、“接続者”は遺構全体の現在状態と、周辺ノードとのリンク状況を確認できたんだと思う」


 ヘルムが息を呑み、敬意を込めた声で続ける。


「こんなものが、森の奥に……これほどまでに残されていたとは」




 ユーリは立方体の鍵をそっと手に取り、台座の中心部に差し込んだ。


 カチリという音と共に、台座の縁が淡く光を放つ。




 >> Sub_Node_07: Reactivation

 >> Scanning connected Nodes…

 >> 3 Node Signatures Detected

 >> Status: Dormant (x2) / Corrupted (x1)




「三つのノードが反応……?」


「ノード07が再起動したことで、隣接したノードが波及的に反応したの。だけど……」


「“Corrupted(破損)”って……?」


「おそらく、かつての戦いや事故で完全に損壊してる。“敵対化”の可能性も含むわ」




 ユーリの背筋に、冷たいものが走った。


 もしそれが“敵対化したノード”なら──番人ユニットのような存在が、制御されずに動いているかもしれない。



 そのとき、番人機構がゆっくりと立ち上がった。


 再び戦闘体勢に──ではない。今度は、穏やかな動作だった。


 "Designate user detected. Voice registration available."

(使用者指定を確認。音声による命名を受け付け可能です)


 ホログラムウィンドウに文字が浮かぶ。


 ユーリは数秒考え──そして、口にした。


「……アリエル。アリエルって名前にしよう」


 "Name confirmed. Unit designation: ARIEL."

(命名を確認。ユニット名:アリエル)




 番人機構──アリエルは、かすかに頷いたように見えた。


 その所作は、機械というよりも、まるで意志を持つ“個”のようで──


「これで、お前はもう“道具”じゃない。俺たちの仲間だ」


 ユーリが手を差し出す。


 アリエルの手が、ゆっくりとそれを握り返した。




「おいおい、こうもすんなり懐かれたら、今までの苦労が嘘みてぇだな」


 グレンが苦笑し、エフィも「……でも、悪くない」とぼそりとつぶやいた。



 "Node 07 successfully activated. User inheritance complete."

 (ノード07、起動成功。)


 "Peripheral node communication... not yet established."

 (ユーザー継承、完了。周辺ノードとの連絡手段──未構築)


「けど、俺たちは繋がった。じいちゃんの遺した“鍵”と、この世界の“奥底”に」


 ノード07──森の番人が目覚めたことで、眠っていた古代遺構ネットワークは、静かに再起動を始めていた。



 

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