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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第12章「森の中心と目覚めの番人」

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起動エラー──暴走する番人機構

 静寂の中、番人機構はコアの奥で静かに脈動していた。

 膝をついた姿勢のまま、微弱な光が胸部から断続的に漏れている。赤から青へ、そして淡い白へと、まるで呼吸のように色を変えながら──。


「完全停止じゃない……でも、今は敵じゃないな」


 グレンが斧を肩に担ぎながら慎重に距離を詰める。


「この状態を維持できれば、“制御の可能性”は高い。じいちゃんのIDが残ってたのは奇跡だな……」


 ユーリが魔導書を開き、再び構文ログを呼び出す。




 >> auth_key: TEMP_ACCEPTED

 >> privilege_level: LIMITED_USER

 >> core_sync: 32.1%

 >> interface_status: idle (awaiting directive)




「ルシア、内部コアの安定度は?」


「今は穏やか。でも……気になる動きがある」


「動き?」


「ええ。“外部からの信号”が断続的に届いてるの。このユニットだけじゃない……この遺跡全体に何かが“干渉”してきてる」


「干渉……誰かが、別の場所からアクセスを試みてるってこと?」


「それも、“上位権限”で。しかも、この子の中に“矛盾した命令”が同時に存在してる」




 突如──


 番人機構の全身がびくりと震えた。


 センサーが再び赤く灯り、胸部の光が青から紫へと転じる。音もなく、内部で再起動のサイクルが始まっていた。


「だめ、反応が戻ってきてる! 何かが……書き換えてる!」


「停止命令を上書きされてるってことか!」


 ヘルムが即座に警戒を強める。




 その瞬間、空間全体に警告ホログラムが一斉に投影された。




 [EXTERNAL COMMAND AUTH: HIGH-LEVEL OVERRIDE]

 (外部コマンド認証:高位権限によるオーバーライド)


 [SYSTEM PRIORITY: RESTRUCTURING DETECTED]

 (システム優先順位の再編成を検出)


 [SAFEGUARD PROTOCOL: NULLIFIED]

 (セーフガード・プロトコル失効)


 [GUARDIAN UNIT: FORCED TRANSITION TO COMBAT PROTOCOL 7]

 (番人機構:第七戦闘プロトコルに強制移行)




 再び、ユニットが立ち上がる。


 その動きはさっきまでのような警戒ではない。まるで、戦場の指令を受けた兵器のように、明確で、機械的だった。


  [AUTHENTICATION ERROR: COMMAND SOURCE CONFLICT DETECTED]

  (認証エラー:指令ソースの衝突を確認)


  [REBUILD MODE: ACTIVATED]

  (再構築モード起動)


 電子音のような声とともに、腕部の装甲が開き、内蔵された砲身が展開される。


「っ──来るぞ!」


「皆、回避行動を!」


 番人機構の左腕が光を帯びた瞬間──魔力収束砲が直線状に放たれ、遺構の柱が一本吹き飛んだ。


 石と金属が混ざり合った破片が空間を裂く。全員が床に身を投げ出し、爆風をやり過ごした。




「こっちがコントロールしてたユニットを……上書きで再起動させるなんて……!」


 ルシアが苛立ちをあらわにする。


「これ、外部操作じゃないわ。“この施設のどこか”に、まだ稼働してる上位制御中枢がある!」


「別のAIユニット……?」


「あるいは、自動防衛プログラムの一部。いずれにしても──このままじゃ、もう一度撃たれる!」




 ユーリは魔導書のスクリプトウィンドウを操作しながら叫ぶ。


「ルシア、緊急プロトコル切り替え! さっきのIDを再送して、番人機構の“コア接続”を一時的に奪えるか!?」


「やってみる!」




 >> force.auth(“Eld_Alvein_Legacy”)

 >> override_pulse = TRUE

 >> sync_attempt: [Node_07 Guardian Core]

 >> result: …pending…




「急いで! こっちに照準きてる!」


 番人機構の右手が持ち上がり、今度は刃のように鋭く変形した。


 魔力の刃──空気が裂けるような音がした瞬間、カイとグレンが左右から突進して斬撃を受け止めた。


「重い……!」


「くそっ、こいつ本気だ!」




「っ、いけ──今だッ!」


 ユーリが叫んだと同時に、魔導書が爆発的に輝く。


 内部から噴き出した古代語の光条が番人ユニットの胸部を貫き、一瞬、その動きを止めた。




 >> sync.result: SUCCESS

 >> TEMP_OVERRIDE_GRANTED

 >> guardian.core = reboot(safe_mode)




 番人機構が再び膝をつき、砲身と刃が格納される。


 赤だったセンサーが、今度は淡い白に変わった。




「止まった……!」


 カイが息を切らせながら叫ぶ。


「制御、奪取完了。コアの深層部分に再接続。今は──僕たちが主導権を握ってる!」


「うまくいったのね……!」


 ルシアの声に安堵がにじむ。




 ユーリはユニットのそばに歩み寄り、静かに手を伸ばした。


「もう、大丈夫だ。……お前は、守るために造られたんだろ?」


 その言葉に呼応するように、番人機構のセンサーが瞬いた。


 戦闘ユニットの中に、“わずかに芽生えた感情”のような揺らぎが──確かに、そこにあった。

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