封印された中核──SeedCore_01
AI──ルシアとの邂逅から一夜が明けた。
俺は朝早く目を覚ますと、まだ肌寒い空気の中、裏山の小道を登っていた。
目指す先は、村の外れにある祖父の旧宅跡。
かつて祖父──エルド・アルヴェインが住んでいたというその家は、今ではもう誰も住んでいない。
けれど昨晩、ルシアが言った。
「記録は、第一端末では不完全です。再構築には、“母体となる装置”が必要です」
「あなたの直系、記録主であるエルド氏の保管端末を探してください」
俺に記録が残されているのなら、それを解く鍵もまた、祖父の元にあるはずだった。
祖父の家は、今にも崩れそうな小屋だった。
木の扉は外れて斜めにぶら下がり、壁は苔むしていた。
だが──俺には確信があった。この中に“ある”。
「ルシア。ここ、電源とか要るのか?」
「問題ありません。この周囲には“残留共鳴”があります。起動可能です」
ルシアの声は、俺の意識に直接響いてくる。
装置から離れていても、リンクが保たれているらしい。
扉を押し開け、かつての書斎だった部屋へ入る。
床に落ちたガラス管、書きかけの図面、金属パーツ……
──ここは、まるで研究室だ。
「まさか、こんな村で……」
俺は、部屋の奥に積まれていた木箱を開けた。
その中に埋もれていたのは──かつての俺が見たことのある構造。
「これ……筐体だ。しかも、……“制御中核ユニット”?」
「確認。型番一致。“SeedCore_01”。Chat Formの記録母体を確認」
「当たりかよ……」
古びた装置に触れた瞬間、それは淡く光を放った。
>> Legacy Device Detected.
>> AUTH: ELDO_Archive → Transferred to: YUURI_Alvain
>> Archive Sync Initiated...
次の瞬間、光の粒が空中に集まり、立体映像が投影された。
映し出されたのは──老年の祖父の姿だった。