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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第11章「迫る森の脅威とギルドの決断」

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帰還──仄かな灯と薬草舗の午後

 地上へと続く長い階段を、ユーリとセラは黙ったまま登っていた。


 地下に眠っていた封印区画と白百合型演算装置《Seraph-Tuner》。そこに残されていたのは、かつてこの世界に存在した“何か”の痕跡──いや、まだそれが終わっていないことを示す、静かなる警鐘だった。


「……外の空気、ひさしぶり」


 セラが階段の上で、振り返って小さく笑った。淡い陽光が彼女の栗色の三つ編みをやわらかく照らし、埃まみれの服さえ少しだけ神聖に見えた。


「ああ。……でも、なんだか妙に眩しいな」


 ユーリは頭を軽く振って外に出る。薬草舗の裏庭に通じる隠し扉が音を立てて開き、夕暮れ前の暖かな風がふたりを包んだ。




 * * *




「おかえり、おふたりさん。思ったより早かったじゃないか」


 店内に戻ると、メイリンが椅子に腰かけたまま手を振った。カウンターの上には煮込みスープとパンが用意されている。


「下の気圧と湿度じゃ、そろそろおなかも空くでしょ? 少しは休んでいきな」


「ありがとうございます、メイリンさん」


 セラが素直に礼を述べ、席に着く。その隣にユーリも腰を下ろした。冒険帰りとは思えないほど静かな、穏やかな時間が流れていた。


「ふふ……」


 突然、メイリンがニヤニヤと笑い出す。


「な、なんですか?」


 セラが怪訝そうに眉をひそめた。


「いやねぇ。二人の雰囲気が、こう……うん、いいねぇ、若いって」


「わ、わかくて結構ですけど……別に、そういうのじゃ」


「違うの?」


 ユーリの問いに、セラはカッと顔を赤くした。


「ち、ちがいますっ! もう、ユーリも何言ってるの……!」


「え、俺?!」


 会話のやりとりを聞きながら、メイリンは愉快そうに肩を揺らして笑っている。


「まあまあ。そうやって照れてる時点で、ね? こっちは気づいてないフリするのも大変なんだから」


 セラは手元のスープを凝視して黙り込み、ユーリも言葉をなくす。薬草の香りとスープの湯気の中、ほんのりと熱を帯びた空気が広がっていた。




 そのときだった。




「た、大変だァーっ!」


 薬草舗の扉が乱暴に開かれ、見慣れた農夫姿の街人が息を切らして駆け込んできた。


「メイリンさん、セラちゃん、聞いてくれ!森が……森が変なんだ!」


「落ち着いて、何があったの?」


 セラが席を立ち、男に駆け寄る。男の額には汗が滲み、目は血走っていた。


「東の森のあたり……あそこ、元々薬草取りが多い場所だったんだが、今朝から様子がおかしい。木が、異様に育ってるし、魔物が……! 魔物が変わっちまってる!」


「魔物が……変異?」


 ユーリが立ち上がった。


「おい、それ本当か? どんな様子だった?」


「ああ、あれは……普通じゃねえ。牙が変な風に伸びてたり、背中に瘤みたいなもんができてたり……。今まで見たことのねぇ姿だった。こりゃ何かが起きてる。あの森に、何か……!」


 セラがユーリの方を振り返る。


「ユーリ……」


「ああ、俺、行ってくる。ギルドで状況を確認しないと」


「でも、あなた──」


 セラの言葉をさえぎるように、メイリンが手をひらひらと振った。


「いいさ、セラ。男の子ってのは、こういう時に飛び出したがるもんだよ。なあ、若いっていいだろう?」


「もう……メイリンさん!」


 セラは顔を真っ赤にしながらも、黙ってユーリを見つめていた。


「すぐ戻る。……無理はしないから」


 そう言い残し、ユーリは薬草舗の扉を後にした。


 向かう先は、冒険者ギルド。


 今、森で何が起きているのかを確かめるために──。

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