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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第10章「詠唱コードと白百合の覚醒」

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白百合、咲き誇る戦場で──セラ、初陣の歌

静寂を破ったのは、地下に響く低く唸るような駆動音だった。


 


 カッ──ン……ギュオオオォォ……


 


 それは、施設の奥――区域G-2の方向から聞こえてきた。


 長く眠っていた鋼鉄が、今まさに目覚め、軋むように体を動かし始めた音だ。


 


「反応を確認。格納ユニット、内部動作を開始しています」


 ルシアが警告を発する。粒子の光が警戒色に変わっていた。


「さっきの表示……自律兵装ユニットって言ってたよな」


 ユーリが端末を睨む。


『旧式型ゴーレム・バージョンC3。戦闘能力は現代の騎士階級中級相当。自律防衛判断あり』


「要するに、“侵入者”と判定されたんだ」


 


 そのとき──突如、施設内の警告灯が赤く点滅を始めた。


 警告:防衛機構、作動準備中。アクセス権限照合中……認証失敗


 


「やばい……!」


「セラ! 後ろに!」


 


 突然、通路が閉じ、ユーリとセラは別の部屋に隔離される。


 自動封鎖壁が降りる音と同時に、部屋の奥で何かが動いた。


 


 ゴウン……ギィィィン……シャァァン……


 


 セラの足がすくむ。


 そこに現れたのは、巨大な金属の巨人だった。


 無機質な顔面、片腕は剣のように変形し、もう片方は魔導術式を刻んだ大盾。

 関節から漏れる微光は、演算核がまだ機能していることを示していた。


 


「これは……ゴーレム……っ!」


『敵性判定中──完了。侵入者認定。排除行動開始』


 


 セラの頭の中に、冷たい声が響いた。


 


 次の瞬間、ゴーレムが動いた。


 


 ドン──ッ!!


 


 地を揺るがす突進。石床が砕ける。


 セラは咄嗟に《リリィ・アリア》を前に突き出した。


 花弁が一枚、光を放ちながら展開され、前方に薄いシールドが形成される。


 


 ギィィンッッ!!


 


 盾に叩きつけられた刃が跳ね返されるも、セラの腕には衝撃が伝わる。


「くっ……!」


『支援型ユニット“リリィ・アリア”、戦闘演算モードに移行。花弁ユニット:自律展開可能。使用許可を』


「はい……! 展開、許可します!」


 


 その声とともに、白百合の杖の先端から、光の花弁が宙に舞い上がる。


 6枚の花弁が浮遊し、セラを中心に円軌道を描き始める。


 


『自律ペタル、配置完了。シールドモードと追尾モード、同時展開可能です』


 


 セラは、思わず息を呑んだ。


 《リリィ・アリア》はただの杖じゃない。これは……戦場で動く、歌う武装。


 


「……私、できるかな」


「セラ、落ち着け! 歌を思い出せ!」


 ルシアの声が頭の中に届く。


「この武装は、“君の心と旋律”に応じて動く! 君が震えていたら、きっとそれも震える!」


 


 セラは、きゅっと杖を抱きしめた。


「……震えてなんか……ない」


 


 目を閉じる。


 彼女の中に、歌が戻ってくる。


 


 ♪──しろきゆり つばさひろげて たたかいをしらぬ ちからのうた──♪


 


 その瞬間、ペタルユニットが光を放ち、追尾モードへと変化する。


 セラの意志に応じて、二枚が前へと飛び出し、ゴーレムの関節部に向けて魔力光弾を発射した。


 


 バシュッ……バシュッ!


 


 直撃。ゴーレムがよろめく。


 しかし、まだ倒れない。


 


『敵性ユニット、戦闘機能保持。さらなる攻撃が必要です』


 


 セラは、杖を強く握った。


「なら……もっと、歌うよ」


 


 花が咲くように、リリィ・アリアが再びその光を拡げていく。


 これは、ただの祈りじゃない。

 これは、戦うための旋律――白百合の初陣だった。

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