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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第9章 「薬草舗の謎と白銀の封印装置」

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モジュール登録完了──君の名は《リリィ・アリア》

 静寂が、店内を包む。


 セラは、装置の前に立ち、そっと目を閉じた。


 その小さな体から放たれるのは、清らかな響き。




 ♪――てんにさく、しろきゆり こえはひかりをまとい、やみにとどけ――♪




 祈りのようでいて、どこか命令のような響きを含む旋律。

 歌が放たれた瞬間、円筒型の装置の表面が脈動を始めた。


「反応開始。詠唱波長、一致しました」

 ルシアの粒子がきらりと光り、装置の側面にホログラムが浮かび上がる。


 それは、古代語の詠唱式。そして──中央部に刻まれていた花の紋章が、ゆっくりと光を帯びる。




 カシュッ……ガチャガチャッ……ギィィン……




 機械音が静かに空気を震わせ、装置の上部が展開していく。

 6枚の白銀のパネルが中央からゆっくりと放射上に動き出し、花の花弁のように開いていく。


「これが……本当に、開いた……!」


 メイリンが驚きと感動をない交ぜにした声で呟く。




 そして、その中央。


 眠るように安置されていたのは、一本の長杖だった。




 白銀の軸に淡い魔力の回路が走る。杖の長さは、セラの身長とほぼ同じ。

 表面には無数の ”歌詞コード(ルーン)” が刻まれており、それがセラの歌声に応じて淡く光っていた。


 先端部は、まだ閉じた白百合の蕾の形状。

 その中央には、虹色にきらめくクリスタルコアが眠っている。


「これ……武器、なの?」


 セラが呟く。だが、そこに感じられるのは威圧でも殺気でもない。

 むしろ、懐かしさ。呼ばれた気配。


「違う。これは“応えるための杖”だ」


 ユーリがゆっくりと言った。


「君の歌と、信じる力に応える道具──きっと、そういうものだ」


 セラは、そっと手を伸ばし、その杖を両手で優しく抱きしめた。




 ――その瞬間。


 白百合の花弁が咲いた。




 ゆっくりと、6枚の白い花弁が展開し、中心の虹色コアが起動する。


 中央に浮かび上がるのは、黄金の光でできた“天使の輪”。


「ホログラムリング出現。神聖詠唱モード、初期化中。正式名称:《Seraph-Tuner》、分類:白百合型・神聖演算長杖型ユニット」


 ルシアの冷静な声が店内に響く。


 セラは目を見開いたまま、震える声で言葉を紡いだ。




「……リリィ・アリア」




 杖を見つめながら、柔らかな声で。


「白百合の旋律。私の歌に応えてくれた、この子に……そう、呼ばせてあげたい」


 光が応えるように、杖のクリスタルが脈動した。


 まるでその名を“喜んで受け入れた”かのように。




「名前、登録します」

 ルシアが静かに告げた。「モジュール《リリィ・アリア》、ユーザー:セラ・ルディアに紐づけ完了」


 杖を抱くセラの姿は、どこか神聖で──


 いや、本当に、天使のようだった。




 メイリンが、静かに目元を拭う。


「……三十年、誰にも開けなかったものを……まさか、あの子の歌が鍵だったなんてねぇ」


「これは“奇跡”じゃない。これは……技術だ」


 ユーリがゆっくりと呟いた。


「だけど、それを“信じて歌える”心が、奇跡を起こしたんだ」




 《リリィ・アリア》──それは、ただの武装ではない。

 歌と想いが交差する、神聖な演算の杖。


 少女と装置は、今この瞬間、強く結ばれた。

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