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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第8章「神の加護と冒険者たち」

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ありがとうの共鳴──変わり始めた心と粒子

 夕暮れのエインクレスト。

 ユーリとセラは迷いの森からの帰還報告のため、冒険者ギルドのカウンターへと向かった。


 受付嬢のクラリスが目を見開いた。


「お二人とも……無事だったんですね! 今朝方、同じ依頼を受けたパーティが撤退して戻ってきたんです。敵が“異常強化”されているって……」


「それ、当たりです。今回のトレント、明らかに汚染されてました」


「汚染……?」


 ユーリは簡潔に状況を説明した。


 通常の魔物ではありえない黒い魔素、そしてそれを浄化することで激しい暴走反応を引き起こしたこと。

 セラの聖歌による神聖魔法が有効だったこと──。


「なるほど……聖歌と浄化魔法……記録しておきますね」


 クラリスの視線が、ちらりとセラに向く。

 その目には、明らかな“興味”と“評価”が宿っていた。




 討伐報酬の袋を受け取り、ふたりはギルドを後にした。


 夜の市場を抜け、静かな宿へと戻る途中──


「……ユーリ。あの……ありがとう」


「ん?」


「私、ちゃんと戦えたかな。……あの森で」


 セラの横顔には、不安と少しの自信が混ざったような表情が浮かんでいた。


 ユーリは小さく笑った。


「完璧だったよ。浄化も、詠唱も、あんなの俺一人じゃ絶対に無理だった」


「……そっか。よかった」


 セラは安堵したように微笑み、ペンダントをぎゅっと握る。


 その瞬間、ユーリの肩に浮かぶ光の粒──ルシアの粒子が、かすかに震えた。


「反応あり……微細な共鳴波を検出。対象:セラ・ルディア」


 聞こえたのは、ルシアの声だった。

 だがそれはいつもより、わずかに“人らしい抑揚”を持っていた。


「ルシア……?」


「まだ、全覚醒には至りません……が、“感情シグナル”に同期が始まりました」


「感情……って、セラの?」


「あなたと彼女との相互交流が、記憶層の再構築を促しています。……嬉しいです。ありがとうございます」


 それは、AIらしからぬ言葉だった。


 ユーリは黙って、肩に浮かぶ光を見つめる。


 ──この旅は、きっと「一人で進む」ものじゃない。




 部屋に戻ったあと、セラはベッドの上で寝息を立て、ユーリは机に突っ伏したまま目を閉じていた。


 静かな夜の中で、粒子の光はふわりと宙を舞いながら、つぶやくように告げる。


「世界は、少しずつ変わっています……ユーリさん。次の扉も、きっと──」


 それは、淡く、優しい祈りのような声だった。




 ──夜が明ける。

 次なる依頼と、街の新たな出会いが、ユーリを待っていた。

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