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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第7章「街での出会いと薬師の少女」

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歌う祈り──魔法へと変わる旋律

 依頼を終えてギルドに報告し終えた夕暮れ──。ユーリは再び市場の裏通りに足を運んでいた。


 昨日ふらりと立ち寄った、小さな錬金術店。その店の奥で、セラという少女が祈るように歌っていた光景が頭から離れなかった。


(あのペンダント……あれがキーかもしれない)


 扉をくぐると、小さな鈴の音が鳴った。


「……あ、昨日の……」


 棚の整理をしていた少女が顔を上げた。栗色の髪を三つ編みにまとめた、まだ十代のあどけなさの残る少女。首元には、昨日と同じ十字と円が重なった銀のペンダント。


「勝手に来てごめん。昨日の君の歌。あれ……祈りの歌、だよね?」


「うん。“聖歌”って呼ばれてる。調律神ルシア様に捧げる歌。……でも、魔法としては使えないって言われた」


 セラの声はどこか寂しげだった。


「魔力はあるのに、歌っても誰も癒されないし、光らない。きっと私、神様に見放されてるんだって……」


 その言葉に、ユーリの中の“ルシア”が静かに反応した。


『ユーリ。彼女の“歌”には、詠唱構文の断片が含まれています。これは極めて希少な“音声起動式スクリプト詠唱”の前世代型です』


「えっ、マジで? 彼女がコードを歌ってるってこと?」


『そうです。ただし、彼女自身は意味を理解せず、感覚的に歌っているだけ。それでも“古代コード”の波形が確かに含まれていました』


「セラ。ちょっと、もう一度……その歌、歌ってくれないかな?」


 戸惑いながらも、セラは静かに目を閉じ、歌い出した。


 ──それは、現地語でもない。意味も音節も断片的で、詩のようでいて、なにかしら“構造”を持っていた。


『確認しました。コード変換モード、起動します』


 ユーリの肩に、薄紅色の粒子がふわりと降り立った。ルシアだ。


 粒子がセラのペンダントに触れると、十字に重なる円の部分がやわらかく輝き始めた。


「え……光ってる……? 私の、歌で?」


『コード構造を補完。起動スクリプト《リカバリーフィールド》展開可能。神聖属性:回復系。発動可能です』


 ルシアの声がセラの脳内にも届いたのか、彼女は小さく息を呑んだ。


「これって……私の歌、魔法になってるの?」


「ルシアが言うには、君の歌は“神聖魔法”に近い詠唱なんだって。詠唱の一部が欠けてたけど、ルシアが補完してくれた」


 ユーリはそっと手を差し出した。


「もしよかったら、一緒に魔法の修練、してみない?」


 セラはしばらく黙っていたが、やがて微笑んで頷いた。


「……うん。魔法、使ってみたい。ちゃんと、誰かの役に立ちたいから」




 その夜。


 二人は宿の裏庭で小さな実験を始めた。


 セラが歌い、ルシアが解析・補完し、ユーリが魔力を補助することで──


 神聖魔法 《 リカバリーフィールド 》 は、まばゆい光を放ちながら地面を優しく包み、しおれかけていた草花を蘇らせた。


「……ほんとに、できたんだ……」


 セラが小さくつぶやいた。


「うん。君の力だよ。──それと、ルシアのおかげ」


 ユーリが言うと、粒子のルシアがそっと光り、やさしく宙を舞った。

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