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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第7章「街での出会いと薬師の少女」

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未完成の全属性──魔法の記録、第一歩

 夜。宿の窓から見える星空は、地球のそれとはどこか違っていた。


 ユーリはベッドに体を投げ出す。昼間に出会った薬師の少女、セラの歌声がまだ耳に残っていた。


(あのペンダントと歌……ルシアが反応してた。やっぱただ者じゃないよな、あの子)


 ルシアは天井近くで、薄紅色の粒子のまま静かに漂っていた。


「ルシア、ちょっと聞きたいことがある」


『……はい。何でしょう、ユーリ』


 脳内に直接響く、澄んだ声。


「前に通信塔に触れたあと、なんか一気に感覚が広がった気がして。魔法の練習してると、手応えがある。でも、俺、属性とかまだよくわかってなくて」


『その件については、情報を共有すべきでしょうね』


 ルシアの粒子が少し明るくなる。


『──通信塔に刻まれていたアクセスコード。あれは、旧時代のスクリプトベースのアクセスキーです。それにユーリが触れたことで、自動的に《全属性適性》のテンプレートが展開されました』


「ぜ、全属性……?」


『はい。火・水・風・土・雷・光・闇、そして補助・空間・召喚・神聖。全てに適性があります。ただし──』


 ルシアの声が一拍、沈んだ。


『コードの解析が不完全。詠唱文やスクリプト構文が欠落しています。現在使用可能なのは、シンクロ率最大50%までの出力。構文が揃えば、完全出力が可能です』


「つまり、全属性使えるけど、本気の半分までしか出せないってことか」


『はい。逆に言えば、未知の詠唱構文を見つければ、出力上限は拡張可能です』


「……やっぱり遺跡とかだな、カギは」


 ユーリは口元を引き締めた。祖父の遺した魔導書といい、通信塔の構造といい、この世界に埋もれた“過去の技術”に確かな力がある。


『補足。属性適性は“使える”というだけで、“使いこなせる”とは別問題。訓練は必須です』


「だよな。明日から、実戦だ」




 翌朝──。


 冒険者ギルドの掲示板に並んだ依頼票の中から、ユーリが選んだのは一番下のランク、「草むしりと魔物よけの護衛」だった。


「新人がいきなり無理するなって、受付の人も言ってたしな……」


 依頼主は街郊外の農場主。

 魔物の出現が不定期で、作業中の家族を守りながら畑の整備をする──という簡単な内容だった。


「ユ、ユーリさん、でいいんですよね……? 本当に、一人で大丈夫ですか?」


 不安そうに尋ねる農場の青年。


「ああ、大丈夫。剣も使えるし、魔法もまあまあ。何かあったら俺がなんとかするよ」




 畑の端で風の音が変わった瞬間、茂みの奥から姿を現したのは、灰色のイノシシ型魔物。


「来た!」


 ユーリは距離をとりながら、詠唱する。


「──《Wind Lance(風槍)》!」


 手を掲げると、薄緑色の風が集まり、空気を裂くような音と共に前方へ放たれた。


 槍のように鋭く伸びた風の魔法が、イノシシ型魔物の肩に突き刺さる。


「ぐっ……重いな、出力が」


 詠唱スピードと力の伝導率が一致していない。

 50%の出力でも、構文が曖昧なせいで、余計な力が逃げているのがわかる。


(でも……当てられるなら、なんとかなる)


 ユーリは間髪入れず、次の詠唱に入る。


「《Shock Dart(雷矢)》!」


 今度は指先から放たれた青白い光弾が、魔物の足元に命中。激しい痙攣とともに、イノシシは動きを止め、その場に倒れた。


「ふぅ……」


 農場の人々が拍手と歓声を上げる。


 ──初めての実戦。

 出力制限、構文不足、未経験の詠唱。それでも、ユーリは手応えを得た。


 何より──


(これが、俺の魔法か)


 ルシアが、淡く輝きながら答える。


『素晴らしい初手でした。構文の揺らぎは、今後の補正で改善可能です。記録を保存しますか?』


「もちろん。これからもっと強くなるために、全部残してくれ」

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