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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第7章「街での出会いと薬師の少女」

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エインクレストへ──少女と歌と旧時代の光

 森の切れ間から平原が開け、風がやわらかく吹き抜けていく。


「目的地、まもなく到着します。進路そのまま、直進四百メートルでエインクレストの城壁が確認されます」


 ナビゲーションの声が、運転席左側のホログラムパネルから響いた。声の主はルシア──淡く発光する粒子の姿のまま、ユーリの頭上をふわふわと漂っている。


「エインクレストか……やっとだな」


 ユーリは、運転中のX-Runnerをゆっくりと止めた。目の前には、緩やかに続く草地と、その先に小さく見える城壁都市の輪郭。


「……このまま街に入るのは、さすがにまずいか」


 X-Runnerは粒子駆動の無音4WD。外観は地球の軍用ビークルにも似た黒く無骨な姿で、どう見ても異世界では浮きすぎる。


「というわけで……収納っと」


 ホログラムパネルから“収納”を選択すると、X-Runnerは光の粒に分解され、カードへと一瞬で格納される。


「便利すぎて怖いわ、これ」


 そうぼやきながら、ユーリはカードを懐にしまい、徒歩で街へと向かい始めた。




 街──エインクレストは、予想していたよりもずっと賑やかだった。


 大きな門が開かれており、旅人や商人が行き交っている。

 門兵に軽い身分確認を受けるが、特に問題はなかった。村出身の放浪者という体裁で通った。


「……町があるってことは、あるよな」


 ユーリは門をくぐった瞬間、すぐに探し始めた。


 ──冒険者ギルド。


 この世界に来てから、幾度となく聞いた言葉。そして、幼少期の訓練中に思い描いていた一歩。


「やっぱり、あった!」


 看板には剣と盾のマーク。

 扉を開けると、中はにぎわう食堂のような空間で、旅人や装備を着込んだ冒険者たちが談笑している。




 受付で手続きすること数分。簡単な適性診断を受け、ユーリは「Fランク冒険者」として登録を終えた。


 そのまま、街の宿を探す。

 初めての市場では、果物や布、金属製品などが露天で並んでおり、貨幣経済がしっかりと成り立っていることがわかる。


 通貨単位は「リヴェル」。

 1銀貨=100リヴェル、という換算で、宿一泊が50リヴェル前後。


「この辺の職人はけっこう器用そうだな……加工技術はあるっぽい」


 通りを歩きながら、職人の鍛冶や皮加工の腕を観察するユーリ。

 ギルドや市場に関わることで、社会構造の基本も自然と学べてくる。


 そんな中、ふと通りの裏に小さな看板があることに気づいた。


 ──《 ルファーナ薬草舗 》


「薬草……? この小さな扉の向こうか?」


 気まぐれでドアを開けたその瞬間──


 中から、歌声が聞こえた。


 静かで、優しく、祈るような旋律。

 この世界での“聖歌”──それは癒しを込めた祝詞だった。


 だが、特別な効果は現れない。

 ただ、少女の胸元で揺れるペンダントが、ほんのり光を放つだけ。


 その少女──セラは、栗色の髪を三つ編みにまとめ、おだやかな瞳を持ち、薬瓶を整理しながら小さく歌っていた。


「……誰、ですか?」


「ごめん、通りすがりで。歌、綺麗だなって思って」


「……ありがとう。でもこれは、お薬の精霊にお願いするための歌なんです。効果は……ほとんど、ないんですけどね」




 そのときだった。


 ユーリの頭上に漂っていた粒子──ルシアが、ピクリと反応した。


「共鳴……?」


 電子的な光が、セラの歌に微かに同期するように揺れる。


「この歌、構造があります。詠唱コードに変換可能。……変換すれば、神聖魔法として機能します」


 ルシアの声が、静かに、しかし確信をもってユーリの脳に伝わってきた。


「……この歌を、魔法にできるってことか?」


「可能性、極めて高し。ペンダントも、旧時代の発音導入機構が含まれています。彼女の存在、重要」

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