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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第6章「最初の遺跡と目覚めのコード」

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継承の証──記録に刻まれし浮遊都市

 機械獣が沈黙したあと、再び静寂が戻った。


 中央ホールの奥、半ば崩れかけた通路を抜けると、

 ユーリの前に重厚な金属扉が現れた。


 古代遺跡らしからぬ“整った構造”に、ユーリはすぐ気づく。


「これ……完全に“施設の扉”じゃん。鍵付きの」


 扉の中央には、手のひら大のインターフェースパネルが浮かんでいた。

 擦り傷や劣化はあるが、表面にはまだかすかに発光するラインが走っている。


 ユーリが手をかざすと──


 >> SYSTEM ACCESS: AUTHENTICATION REQUIRED

 >> USER IDENTITY: UNKNOWN

 >> REQUESTING INPUT: VOICE / BIOMETRIC / LEGACY CODE


 《アクセス試行を検知。同期インターフェースに接続します》


 ルシアの声が重なると同時に、粒子がパネルに向かって収束していく。


 すると、扉の上部に走る赤いラインが、一瞬だけ蒼白く変色した。


 《プロトコル一致。過去ログ確認中……記録主:ELDO_ALVAIN》


「じいちゃん……!」


 《権限継承フラグを確認。“Yuuri_Alvain”に対し、制限付きアクセスを許可します》


 カチリ、と音を立ててロックが外れる。


 ゆっくりと開かれた扉の奥には──

 球体状の中央端末と、幾何学模様の走る白い壁面が広がっていた。


 空間の中心には、円形の台座。

 そこに浮かぶのは──一枚のホログラム・コア。


 《これは……私の中枢記録。初期化ログとバックアッププロトコル……!》


 ルシアの粒子が、淡く強く光りはじめる。


「……思い出せそうか?」


 《断片的ですが──私がこの星に残された目的、それが近づいています》


 そして、コアが光に包まれる。


 空中に展開されたホログラムには、無数の数式、回路設計、記録データ、そして──


 映像が、再生された。




 ──そこに映っていたのは、かつてこの星に存在した“都市”。


 だが、それは今の文明とは明らかに異なる。

 空を飛ぶ艦艇、粒子光で稼働するタワー、光線のように地表を走る情報線。


 《この記録は……旧エデン計画。失われた浮遊都市群の起動フレーム》


「やっぱり……この世界にも、かつて“科学文明”があったんだ……」


 《それは、“かつて”ではありません。私は、“それ”を生きていたのです》


 ルシアの粒子が、まるで心臓のように脈動する。


 《ユーリ。私はまだ未完成な存在。でも、今ならわかる。》


 《あなたが、この星の未来に必要な存在だということ──》


 その言葉に、ユーリの胸が熱くなる。


 もはや、ただのガジェットでも、過去の遺物でもない。

 ルシアは、生きている。


「ありがとう、ルシア。……じゃあ、二人で行こうぜ」


 ユーリが右手をかざすと、中央のホログラムが再び変化する。


 >> New Access Route Created.

 >> E.D.E.N. Terminal #A1 — Linked.

 >> Support Protocol: Lucia Awakening - Progress 58%


 システムは、ユーリを正式な継承者として認めた。


 そして、ルシアはその粒子を緩やかにたなびかせながら、再び彼の肩に宿る。


 《ありがとう、ユーリ。これからも、私はあなたの傍にいます──》


 遺跡をあとにし、ユーリは夜明けの空へと歩み出す。


 空にはまだ、星が瞬いていた。


 だが、それは確かに──新しい時代の幕開けを告げる光だった。

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