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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第6章「最初の遺跡と目覚めのコード」

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開かれた扉──最初の遺跡に潜むもの

 丘を越え、森を抜け、岩場をいくつか乗り越えた先──

 それは唐突に姿を現した。


 山肌を抉ったような窪地の奥。

 黒い岩に覆われた地形の中に、それはぽっかりと開いていた。


 《旧通信塔跡地》。

 村の記録には、ただ「危険区域」「禁足地」とだけ書かれていた場所。


 けれど、Chat Formの地図には、明らかに“人工的な構造物”の輪郭が表示されていた。


「……入口、もう開いてる……?」


 崩れかけた岩のアーチの中。

 大きく裂けた亀裂のような空間が、地下へと続いている。


 すでに入口らしき“扉”は開いており、開口部の周囲には焦げ跡と摩耗した機械片の残骸が散っていた。


 誰かが先に侵入した形跡──

 だが、それがいつのものかはわからない。


 ユーリは、耳を澄ませた。


 風。葉擦れ。砂のこすれる音。


 ──それに混じって、ごく微かに。


「……グルゥ……グルルル……」


 低く、喉を鳴らすような──獣の気配。


「これ……ダンジョン化してないか?」


 魔力の濃度が高まった地下空間に、野生生物や魔獣が巣を作る現象。

 それを人々は“ダンジョン化”と呼ぶ。


 つまりこの遺跡は、すでに“自然な廃墟”ではない。


 ユーリは表情を引き締めた。


「行くか。準備は──問題ない」


 腰にはガンスラッシュ。腕にはシールドリング。

 背には祖父から譲り受けた多機能バックパック。

 そして、胸ポケットにはいつもの金属カード──アイテムボックス。




 内部はひんやりとしていた。


 洞窟状の通路を抜けると、そこにはコンクリートと金属がむき出しになった廊下が続いていた。


 ──ここだけ、明らかに“人工物”だ。


 地面にはかつてケーブルだったと思しき線が転がり、壁面には何枚かの錆びたパネルが貼られている。


 その奥。かすかな光源がある方向へと進んでいくと──


 突き当たりに、扉があった。


 ほとんど崩れてはいるが、枠組みだけが奇妙に無傷で残っている。

 そしてその右横には、古びた端末と思しき装置があった。


 ユーリがそっと手を近づけると、反応した。


 ディスプレイのような表面がぼんやりと光り──

 言語不明の文字列とともに、音声ガイドが起動する。


 >> SYSTEM ONLINE...

 >> AUTHORIZATION REQUIRED: VOICEPRINT OR KEYCODE

 >> PLEASE PRESENT IDENTIFIER.

「認証……これ、Chat Formと同じ構文系?」


 ユーリは驚きとともに、バックパックから祖父の魔導書──《端末》を取り出した。


 すると、それに呼応するように、背後で静かに粒子が揺れる。


 ルシアだ。

 光の粒のままの彼女が、緩やかに近づいてくる。


「反応信号……一致。端末とのリンク開始準備中」


 機械音声のように、淡々としたルシアの声が響く。


 端末のディスプレイが強く光り、再び英語の表示が切り替わる。


 >> KEYCODE MATCH

 >> AUTHORIZATION GRANTED.

 >> Access Level: USER_TYPE-B / Legacy Lineage

 >> Opening Gate...

 ──ゴゴゴゴゴ……!


 扉が音を立てて、ゆっくりと開き始めた。


 その先は、漆黒の闇。


 風も、音も、熱もない空間。

 だが、ユーリははっきりと“それ”を感じていた。


 ──奥に、何かがいる。


 それは獣のような気配。

 それでいて、機械的な音を伴う“何か”。




「行くしかないな。これは……俺の役目だ」


 ユーリは、ガンスラッシュのロックを外した。


 最初の遺跡。最初の接触。

 そして──この世界の“真実”への第一歩。

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