俺のルート──X-Runner、旅へ発進
キャラバンとともに出発してから数時間後。
道は分岐に差しかかった。
一方は舗装された街道──最初の目的地である小さな街へと続くルート。
もう一方は、森を抜ける山道──地図にも載っていない裏ルートだった。
ユーリは街とは反対の、後者を選んだ。
「ここで、分かれます。ありがとうございました」
「おい坊主、本当にそっちでいいのか? 山越えだぞ?」
隊商長が心配そうに声をかける。
ユーリは笑って首を振った。
「大丈夫です。こっちは“俺のルート”なので」
少し驚いたような顔をされたが、無理もない。
15歳の少年が一人、街道から外れたルートを選ぶなど──まともな判断には見えないだろう。
だが、彼には確信があった。
“自分には武器がある”。
そして“この世界を旅する準備は、すでに整えてある”。
キャラバンを見送った後、人気のない林道の中ほどでユーリは立ち止まり、カード型の端末を手にした。
「──よし、じゃあ一発目……いくか!」
カードを空中にかざし、アクセスコードを解放する。
Item Access: X-Runner / Fuel-less Terrain Vehicle
Deployment Mode: Compact → Travel
Confirm? [YES] [NO]
「YES!──展開!」
光の粒子が収束し、空間に淡くきらめくブロックが次々と形成されていく。
それはまるで、立体パズルのように組み上がり、数秒で一台の車両が完成した。
──《X-Runner》。
黒く無骨な車体。四輪駆動のクロスカントリー仕様。
燃料不要。天候対応型ボディ。軽自動運転モード付き。
「うぉお……やっぱカッコいいわ……!」
少年の顔に、年齢相応のワクワクした表情が戻る。
車体の側面に手をかざすと、ドアがスライドして開き、内装の操作パネルが光を帯びる。
「ルシア、ナビ支援頼める?」
「可能です。ルートスキャン開始──サブサテライト機能、微弱ながら起動中」
「サブサテライトって、まだ動いてたのかよ……!」
ルシアの淡い粒子が運転席のダッシュボードの上に集まり、投影されたマップが立ち上がる。
進むべき道、目的地への迂回ルート、補給可能地点などが次々と表示される。
「じゃあ、行くか──俺の旅、第一歩」
クラッチレバーとハンドルに手をかけ、アクセルを踏むとエンジン音のない無音の駆動が、滑るように四輪を回し始めた。
タイヤが土を蹴る。
木漏れ日の中、X-Runnerは森の奥へと静かに滑り出していった。




