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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第30章 「王都行きの支度と遊戯の始まり」

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稼ぎ方の模索──遊びと商いの狭間で

 冒険者ギルド・エインクレスト支部。

 朝の喧騒もひと段落し、受付カウンター前にはちらほらと人が並んでいた。


「金貨百枚超え……やっぱ、そう簡単には出てこないか」


 ユーリが依頼掲示板前でこっそり溜息をつく。

 その隣で、カイルが腕を組んでいた。


「短期間で終わって、大金が入る依頼ってのは、そもそもそうそう無いもんだ。ギルドとしても割に合わないしな」


 ユーリは、受付でカリナに声をかけた。


「おかえりなさい、ユーリくん。何か忘れ物?」


「いや……その、カリナさん。高額依頼って、今なにかありますか?」


 カリナは少し目を細め、後方の書類棚から何枚かの依頼票を取り出す。


「高額、というと……金貨百枚を超えるレベルね?」


「うん、できればそれくらい」


 カリナは依頼票を数枚机に並べながら首を横に振る。 


「今ある高額依頼は、魔物討伐と物資運搬が中心ね。どれも移動だけで三日以上かかる。いま受けると、王都への出発には間に合わなくなるわよ」


 ユーリはカリナの言葉に顔をしかめた。


「なるほどな……出発前にもう一稼ぎってわけにはいかないか」


「まあ、王都で稼げばいいだろ。あっちは規模が桁違いだし、依頼も質も段違いだ」


 カイルが軽く肩をすくめて言った。

 その口調に少し苦笑するような響きが混じっていた。


「商業ギルドってのもあるぜ? 遺跡で拾った素材やアイデアを商品化して、売り込むって手もある」


「商品化か……」


 ユーリは考え込む。自分にとって“使える”と判断した物は、それなりにある。だがそれを他人にどう売るかとなると、また別の話だ。


 ふと、カリナが鋭い目つきでカイルの方を見た。


「王都での稼ぎもいいけど……気をつけてよね、カイル」


「……へ?」


 カリナの視線は冷たく、どこか刺すような鋭さを帯びていた。


「私、忘れてないから。前にカイルが持ち込んだ“商売話”、大騒動になった件」


「ま、まってくれよカリナ、それは誤解ってもんだろ? 俺はただの仲介で――」


「はいはい、弁解はいいです。ユーリくんを巻き込んだら、私が許しませんからね」


「……りょ、了解しました……」


 明らかに縮こまるカイルに、ユーリが思わず笑いをこらえる。

 ルシアは興味深そうにそのやり取りを見つめていた。


 ギルドの空気が少しだけざわつく中、ユーリは少し離れた窓の外──市場通りを眺めた。

 石畳を行き交う人々、露店に並ぶ小物や食品。

 そして通りの脇に、子どもたちが集まり、手遊びや石を使ったゲームをしている姿。


 ──ああ、そうか。


「……そういえば、みんな何して遊んでるんだろ?」


 思わず漏れたユーリの独り言に、カイルが振り返る。


「ん? 遊び?」


「いや……前に、X-Runnerの改造の時に話してたんだ。旅の途中って、移動が長いんだよ。退屈だって」


 ユーリは窓の向こうを見つめたまま呟く。


「そういう時に、誰でも遊べて、持ち運びできて、飽きがこない……そんなもんがあったらいいのになって」


「ほう、なるほどな。で? あるのか?」


「…………ある。前の世界には」


 カイルが片眉を上げた。


「そりゃ気になるな。なんて名前のもんだ?」


 ユーリは口を開きかけて──すぐに閉じた。


(……危ねぇ。また前世のことを言いそうになった)


 ルシアが後ろから静かに肩を叩く。彼女の優しげな笑みに、ユーリは小さくうなずいた。


「ま、とにかく。ちょっと……試してみたいものがあるんだ」


 そう言ってユーリは背伸びをし、ぱん、と手を叩いた。


「よし、薬草舗に戻ろう! アリエルに相談してみる」


「……なんか嫌な予感がする」


 カイルがぼそりと漏らすと、カリナはそれにかぶせるように呟いた。


「嫌な、というより……面倒くさい予感ね」


「聞こえてんぞ、ふたりとも!」


 ユーリの抗議が、静かなギルドの空間に響いた。



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