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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第30章 「王都行きの支度と遊戯の始まり」

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出発前の確認──街道と遺跡の情報を求めて

 柔らかな朝の陽射しが、冒険者ギルドの前に止められた《X-Runner Varia》の装甲を鈍く光らせていた。黒鉄色のボディに刻まれたギアと翼の紋章が、まるで出発を告げる旗印のように凛としている。

 ユーリはその堂々たる車体を見上げながら、隣に立つアリエルへと問いかけた。


「アリエル、今から出れば……王都には、あと何日で着けそう?」


 アリエルは一瞬だけ瞳を伏せ、次いで光を帯びた視線を浮かべた。


「……現在、2月12日午前9時。指定された謁見日は19日朝。王都アリステリオへは、通常移動であと6日残されています」


「ってことは、18日には着いてないとアウトだよな」


「はい。18日夜までに到着できれば、安全圏です。途中、道路状況や予測外の停滞がなければ問題ありませんが……」


「トラブル回避も含めて、早めに動くか」


 ユーリはひとつうなずき、X-Runnerの側面を軽く叩いた。


「おーい、お前ら!」


 太く響く声に振り返ると、ガンゾーがギルドの入口に立っていた。肩に外套を引っ掛け、煙草を吸っているようだった。


「街道は広いが、あの化け物みたいな車で走るなら特に気をつけろ。……くれぐれも人を轢いたりすんなよ?」


 にやりと笑って言い残すと、ガンゾーは手を挙げてギルド内へと消えていった。


「……人轢いたら、洒落になんないな」

 ユーリが苦笑すると、すぐ隣で別の声が弾んだ。


「じゃあ、準備も終わったし、出発ね!」

 ルシアだった。人型の姿でエネルギーに満ちた声を上げ、すでに助手席へと歩き出していた。


「ちょ、ちょっと待った!」


 ユーリがあわてて彼女を止める。


「まだ確認しておきたいことがあるんだ。ちょっとだけ、我慢して」


「えええーっ!? もう、せっかくスイッチオンな気分だったのに……」


 不満げに口を尖らせるルシアをなだめながら、ユーリはギルド受付に立つカリナのもとへ向かった。


「カリナさん。王都への街道、今ってどんな感じなんですか? 魔物とか、山賊とか……危険はありますか?」


 カリナは少し意外そうな表情を見せてから、すぐに真面目な顔に戻った。


「今のところ、大きな危険報告は来てないわ。ただ、森沿いの中継地点で“獣の気配が強い”って報告がひとつ。魔物というより野生の群れかもね」


「なるほど……十分警戒は必要ってわけか」


 ユーリは納得したように頷くと、今度はアリエルの方を向いた。


「アリエル。王都までの道沿いで、近くに遺跡っぽいのがある場所って分かる?」


「検索中──街道から半日圏内にアクセス可能な未確認ノードがひとつ。正確な用途不明。ただし現在は封鎖されていない可能性があります」


「おおっ、それは寄り道の価値ありそうだな」


 ユーリがほのかに目を輝かせたそのとき──


「また寄り道……? だから遅くなるのよ……」


 ルシアが後ろからぼやくように言った。


「文句を言うな。情報収集と準備を怠る者は旅の途中で泣く羽目になるって、昔の誰かが言ってた」


「……誰よ、それ」

「……さあ、誰だったかな?」


 ユーリがはぐらかすと、アリエルが静かに補足する。


「ルシア。移動の最適化も重要ですが、探索型行動には常に予備情報とリスク管理が伴います」


「うぐ……アリエルまで説教くさい」


 不満そうにしながらも、ルシアはしぶしぶ車体の傍へ戻った。


 ──出発は、もうすぐ。

 だがその前に、すべての地図を開き、道を選ぶことがこの旅には必要なのだ。



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