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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第29章「鋼の車輪と世界樹の記憶」

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資材の山──古代の箱

「……こりゃまた、どこまで続いてんだ」


 E-17──正式名称《Node-07: Sub-Control Hub》の奥へと続く通路を進みながら、カイルが思わずつぶやいた。

 剥き出しの壁面には、淡く光るラインが神経回路のように走り、天井には送風用らしきパイプが何本も並行して張り巡らされている。


「こっちが物資保管エリア。通称“ガラクタ山”ね」


 ルシアが前を歩きながら振り返った。


「こっから先は、古代の自動補給システムや実験資材が集められてたらしいけど、稼働停止から数百年。今は分類もされてない“部品の墓場”ってとこよ」


「うへぇ……そりゃまたスケールのデカい墓場だな」


 カイルは口をへの字にしつつ、立ち並ぶ金属コンテナやパーツの山に目をやる。


 確かに、その光景は圧巻だった。

 壁際には大型フレームや破損したアームパーツ、剥き出しの回路盤。

 床にはケーブルや絶縁コイル、見たことのない金属板が無造作に積まれている。


「ユーリ、これ……何に使うものか分かるの?」


 セラが見上げるように聞くと、ユーリは一つのパネルを持ち上げて裏を確認する。


「これ、多分……車両用の補助骨格パネルだ。規格的にはX-Runnerと互換性ありそうだし、強度も問題なさそう」


「ならそれ、もらってくぜ」


 カイルがパネルを持ち上げ、軽々と肩に担ぐ。


「うお、意外と軽いなこれ。中空か?」


「うん、中に制振剤が詰められてる構造だと思う。魔素振動対策用」


「魔素振動対策……普通は軍用装備にしか使われねぇぞ?」


「そういうのが平気で転がってるのが、ここだから」


 ユーリが苦笑しながら答え、隣の部品ラックから錆びたタイヤアームを引っ張り出す。


「これ、前輪操舵用のステアリングユニット。外装は古いけど中身は使えるかも……アリエル?」


「はい、現在同規格品との適合率を解析中……内部モーターコア、使用可能と判定」


 アリエルのホログラムがぴょこんと点滅しながら浮かび、部品のスキャン結果を表示した。


「よし、それもアイテムボックスに入れてくれ」


「了解しました」


 そんなやりとりをしながら、ユーリたちは次々と部品を発掘していく。

 制御基板、ミラー、フレーム、昇降用ジャッキ。

 数百年の眠りから目覚めた遺物たちが、再び動く日を待っているかのようだった。


 だが──


「……出力系だけが、ないんだよな」


 ユーリがポツリと漏らす。


「変形用モーターと補助駆動のパワーパック、ある程度の出力がないと可動ギミックが活かせない。

 小型のはあるけど……さすがにシェルターを乗せて動かすには足りないな」


「市場で買えそうなものは?」


 セラが心配そうに問うと、アリエルが即座に答える。


「現在の市場流通品に該当パーツなし。代替可能なパーツでもエネルギー効率は目標値の38%未満です。かつ、コストは金貨三百枚以上となります」


「却下だな。さすがに財布が死ぬ」


 ユーリは頭を掻きながら深いため息をついた。


「だったら……あっちも見てみない?」


 ルシアが視線を奥へ向ける。

 かつて研究用だった一角──現在は《作業工房区画》と呼ばれている場所だ。


「こっちに何かあるかも。使えそうなジャンクが積んである“あのコンテナ”が、ずっと気になってたの」


 ルシアに案内され、ユーリたちはさらに奥の自動扉を抜けた。

 そこはやや天井が低く、壁沿いに作業ベンチと工具棚が並ぶ“工房”だった。

 各種の3D組成器、拡張作業台、ホログラムスキャナーなどの設備が設置されているが、現在はほぼ停止状態。


「ここ……すごい。工場みたい」


 セラが目を丸くする。


「実際、試作機の製造や、資材のリサイクル加工をしてたエリアだからね。作業用AIがいればもっと動かせるんだけど……今はアリエルだけが頼り」


「……ふふ」


 アリエルはその言葉に、少しだけ嬉しそうな音を響かせた。


 その工房の一角──重機さえ必要としそうな巨大コンテナが鎮座していた。

 表面にはかすれた古代文字、そして起動用のハンドルパネル。


「これ……開けられるのか?」


 カイルが一歩下がる。


「たぶん……古いパスコードロック式だけど、解除できるかも。ルシア?」


「任せて」


 ルシアが手をかざすと、コンテナ前面にホログラムインターフェースが出現し、彼女の指先が高速で光のパネルを操作しはじめる。


 ──数秒後、カシャン、と機械音が鳴った。


「開いた!」


 扉がゆっくりとスライドし、内部に並ぶ精密部品の山が現れた。

 ルシアの目がぱっと輝く。


「……これよ! 出力制御用の高圧エネルギーユニット。変換率は旧世代規格だけど、最大で100kW超。十分に可動範囲内よ!」


「やった……これで全部そろった!」


 ユーリは歓声を上げ、仲間たちとハイタッチを交わした。


 アリエルがすでに各ユニットをスキャンし、改造計画の再計算に入っていた。

 設計図も組立図も、数時間以内には完成する。


「じゃあ次は、工程管理と組立スケジュールの調整だね」


 ルシアがやる気に満ちた声で言うと、ユーリも力強くうなずいた。


「《Varia計画》、いよいよ組立フェーズに入るぞ!」


 地下遺構に、未来を組み上げる音が響き始めた。

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