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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第27章「街の光と再会の余韻」

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服と微笑み──ウィンドウショッピングの午後

 市場が賑わいを見せる頃、エインクレストの中心街――市場通りから少し外れた、高級服飾通り。

 色とりどりの布地が風に揺れ、ウィンドウ越しに並ぶ衣装の数々は、旅人向けというよりも、貴族や富裕層の嗜好品といった趣を帯びていた。


「わあ、すごい……この刺繍、手仕事だよね?」

 セラが感嘆の声を漏らす。緑を基調にしたフリル付きのワンピースが飾られた店の前で、目を輝かせていた。


「ギルドの報酬で余裕があるから、ちょっといい服が買いたくてね。かわいいも、かっこいいも揃うはずよ」

 彼女はそう言ってユーリを振り返る。


「セラはそれでいいけど、ルシアとアリエルは……ほら、服のデータさえあれば作れちゃうし。買わなくても……」

 ユーリが困ったように言うと、すぐにルシアが食い気味に口を挟んだ。


「違うわよ、ユーリ。買わなくても《試着》はできるの! フィッティングは女の子にとって大事なイベントなのよ☆」

 そう言ってスカートの裾を軽く摘み、くるりと一回転する。


「……そういうものですかねぇ」

 アリエルがあまり納得していない様子で呟いたが、視線はすでに次の店舗のショーウィンドウへ向いていた。


 ◇


 最初の店は、レースとフリルをふんだんに使ったクラシカルなドレス専門店。

 セラは淡い水色の膝丈ドレスを手に取り、鏡の前で当てながら「これ、似合うかな」とユーリに尋ねた。


「……すごく似合うと思う」

 素直な言葉に、セラは耳まで赤く染めて「そ、そう……? ありがと」と小さく呟いた。


 次の店では、アリエルが黒と白のシンプルなモノトーンワンピースを選び、試着室から出てくると無言でユーリを見つめる。


「……お、おぉ。うん、かっこいい。ちょっと理知的な感じ」

 褒めると、アリエルはわずかに口元を緩め「ありがとうございます」と小さく言った。


 そしてルシアはというと――。


「見て見てユーリ! これどう? 背中が開いてて、風を受けたらふわっとなびくのよ!」

 全体的にピンクの花模様があしらわれた、リゾート風のドレスを身につけ、両手を広げて回転していた。


「……それ、飛びそうだな」

 冷静に返すユーリに、ルシアはむぅっと唇を尖らせたが、すぐに満足げに笑った。


 ◇


 その後も、4人は通り沿いの店をひとつひとつ巡っていった。

 帽子専門店ではセラが小さな白いキャップを試し、アリエルは黒のリボン付きハットを被ってユーリを見つめた。


「似合ってる。ちょっとお姫様みたいだ」

 そう言われて、アリエルは口元をそっと抑えながらうつむく――しかしその耳はほんのり赤い。


 さらにアクセサリー店では、ルシアが煌びやかな宝石のネックレスを胸元に当て、

「この世界の宝石、なかなかやるじゃない☆」とご満悦。


 セラは髪飾りを選びながら、ユーリの視線に気づき、少し恥ずかしそうに微笑んだ。


 ◇


 夕暮れ、街の通りが赤く染まり始めた頃。

 4人は最後の店を後にして、広場のベンチでひと休みしていた。


「今日はいろんな服を見られて楽しかったね」

 セラが言うと、ルシアが大きく頷いた。


「うん、満足満足! でも今度は靴とバッグの通りにも行きたいわね」

「それはまた今度にしてください……」

 ユーリがため息まじりに返すと、アリエルが静かに微笑んだ。


「でも……私も、少し楽しかったです。ユーリが“似合う”って言ってくれたの、嬉しかったですから」


「お、おう。じゃあ……また今度も、行くか」

 そう言うと、アリエルは小さく頷いた。


 かくして、にぎやかで騒がしくも温かい一日が、静かに暮れていく。

 4人の絆は、少しずつ、確かに深まっていた。


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