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ローファンタジーショートショート

猫の手を借りた

「ああもう、休みたい。それかせめて猫の手も借りたい」

「それなら貸してやろうかい?」

 何日も会社に泊まり込んでもまだ終わらない仕事の忙しさに思わず呟いた独り言に仕事場の隅から返事が聞こえた。他の社員は全員私に仕事を押し付けて帰ってしまったので誰もいないはずなのにと思いながらそちらへと目をやると、そこには会社で飼っている猫がいた。

 飼っていると言ってもいつの間にかこの近所に住み着いていた野良猫であり、毎日私が餌をやっていたら居着いてしまったのである。賢い猫で仕事の邪魔にはならないだけではなく、ちょっとした癒しにもなっているので黙認されているような状態である。

 その猫がいま私の方をまっすぐに見て、たしかに口を動かしてこう言った。

「手を貸してやろうかい? あんたには散々世話になっているし、恩返しだよ」

 そのときの私は判断力がおかしくなっていたのだろう。猫でもなんでも使えるなら良いかと思い、私の目の前にある書類のいくつかを猫の方へと押しやった。

 猫はふんふんと鼻を鳴らしながらその書類を眺めると、両の前足でペンを器用に持ってさらさらと書類になにかを書いていく。

 意外とちゃんとやってくれていそうだと思った私は自分の書類に取り掛かった。


 それから数日後、私は急にクビを言い渡された。どうやら猫に任せた書類には全てにゃあにゃあと書かれてきたようで、仕事でふざけるような奴は置いておけないということだった。

「たしかに休みたいとは言ったけどなあ」

 荷物に紛れていつの間にか私の家に付いて来ていた猫は知らん顔をしながら、私に頭を撫でながら気持ちよさそうにしていた。

お読みいただきありがとうございます

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