21. 女騎士達
「殿下! やっと見つけましたよ!」
研究所に女騎士が6人やって来た。
面倒な事になる予感。
殿下ってどの殿下だろうか?
うちには王女殿下が沢山居るのだけど。
「お前ら、帝国領の奥深くまでよく来れたな? アタシに何か用か?」
なるほど。スズメの近衛騎士かな?
王国特有の華美な装備を身に着けてるわ。
確かによく此処まで来れたね。
帝国の防衛網はザルかな?
派閥争いに忙しくて、軍部の活動がおざなりになってんじゃないの?
帝国は、地政学的には安定しちゃっているからなあ。
西側は悪魔の森、その向こうは海。
北側は、ドラゴン山と麓の樹海、その向こうとは国交すら無い。
だって、人の往来が無いからね。
東側は大きな河を挟んで、いくつかの小国が緩衝地帯になっている。
そして南側は海。
近海では漁師が最強戦力で、外洋は波も荒く魔獣の世界。
この世界には海軍も存在しないし、他の大陸との交流も無い。
制空権はドラゴンが握っているから、空を飛ぶ機械すら無い。
当然、空軍は存在しない。
故に、帝国への大規模な軍事侵攻は難易度が高い。
逆も然りで、帝国から侵攻するのも難しい。
帝国は小さな国から始まったけども。
周囲の国を軍事力で次々と呑み込んで行き、今の形になった。
今の領地を維持するべき派と、もっと領土を拡大するべき派。
帝国内は大きく分ければ、保守派と拡大派に分かれる。
アンは拡大派寄りだけど、先鋭的に過ぎて僕以外味方が居ない。
旧王家とも縁は切れている。
なお、今は王家争奪戦に貴族達は明け暮れている。
保守と拡大、どちらが正しいのかは難しい。
軍事力を防衛だけにすると、大量の兵士が失業する。
経済的に行き詰まりつつあるから、既に失業率は高いのだ。
領土を拡大すれば生産力も確保出来るし、雇用も増やせるだろう。
しかし、もっと戦費が必要になる。
小国を少しづつ植民地にするなら、リスクも少ないけど。
王国や聖国といった大国を相手にして失敗すれば帝国は傾く。
だからこそドラゴン研究所がもたらす技術革新が期待されていた。
しかし、それも今は、研究も開発も中止している。
再開しても、以前のような規模にはならないだろう。
外務大臣になったから、これでも色々と調べたりしてるんだよ。
確実に言えるのは、内部抗争している事が、最大の問題って事かなあ?
それはともかく。
「忙しいから帰って?」
スズメは、折角やって来た臣下達に冷たい。
確かに忙しいのだ。
研究所に残ったドラゴン素材やデータの保全で。
残す物は、実家に運ぶ事になった。
あそこなら安全だからね。
廃棄する物を分別して、運搬と廃棄を並行で進めている最中だ。
残った素材は全て実家に移動で確定。
試作品も大量にあって、これは倉庫とは別にガレージや地下に保管していた。
兵器も含んでいるからね、素材と一緒だと危険だから。
僕達が既に使っている物は残した。
既に市場に出ている物は売却して、まだ市場に出てない物は実家に移動。
データや書類は僕達では分別も整理も出来ない。
これはベーコン・レタス・トメイトゥに任せた。
聖国へ早く行きたいらしくて、テキパキと働いてくれている。
予定より2週間も早く退院してくれたし。
どれだけ聖国に夢を見ているのか。
彼女達に裏切られたら終わりだよ。
その時は、仕方ないね。
僕の責任だ。
といっても、聖国へ逃げるか、ドラゴン山に籠もるかしか無いけどね。
「殿下は私達を見捨てるのですか!」
うちの3人娘に比べると、王国の女騎士達はどうにも湿っぽい。
失踪した王女なんか、もう忘れたら?
だってもう僕の奴隷だから返せないよ。
「私達の事は、遊びだったんですね?」
「お姉様!」
は?
湿っぽさがグッと上がったよ。
ははぁ、これがスズメの邪悪な側面ですか。
「うるさいな、お前らちんちん無いじゃん」
「何ですって!?」
女騎士達が、ぎゃーぎゃー喚いたり泣いたり。
修羅場じゃん。
ちんちん付いてそうなのが見当たらないので、敵を見失っている。
ここに居るんだけどね。
そうは見えないんだろうなあ。
だって、僕がこの場でいちばんの美少女だから!
いや、帝国でもいちばんだよ。
なんてね。
「あんた、そんなにちんちんがいいの?」
アンまで乱入して来た。
「いや、だって分かり易い拒絶でしょ?」
「そうね。実際には、ちんちんをモノにしてないけどね」
「奥様もですけどね?」
「ほっとけ!」
彼女達は、ちんちんの使い方を知ってるんですかね?
今この場には、それを突っ込める者が不在だ。
だって、僕もよく分かっていない。
繁殖行為は知っている。
ドラゴン山で、獣達がやっているのを何度も見たから。
ニンゲンも同じ様な事やるんだろうな、くらいは知っている。
でも、ストラト文庫はファンタジーばかりだったからなあ。
今それは、どうでもいいか。
「うるさい!」
アンがキレた。
腰の魔女っ子ステッキを抜くと、女騎士全員の頭を殴りつけた。
半ば八つ当たりだ。
さすがは王国の近衛騎士だ。
ぎりぎり死んでないよ。
「さすがに6人も殺っちゃったら開戦のきっかけになるかしら?」
「この場で消してしまえば大丈夫ですよ」
「ん? オレが燃やすぞ? フレイム・ドラゴンは燃やすのが得意だっ」
そういえば、うちは燃やすのが得意なのしか居ないわー。
ネット炎上的な意味でも。
僕自身も含めてね。
「とりあえず、剥こうか」
「そうですね。お手伝いします」
「オレは、この娘を剥こうっ」
何を始めているんだ。
僕も手伝うべき? いや、見てていいの?
すっとんつるりんな裸体が6つ。
死体しにしか見えない。
ほんとに見てていいの?
「聖国への手土産にしては?」
「すっとんつるりんって価値あるのかしら?」
「アタシ達みたいな趣味の貴族もきっと居ますよ」
「オレの妹にするかなー?」
あー、これ大丈夫なの?
この3人は全員王女だよね?
姉さんの野望は、お風呂の中で聞いた事がある。
大量の妹に囲まれて滅びる事だそうだ。
悪魔の実が何個要るのよ?
僕は協力しないよ?
姉さんもサクラには乗れそうもないね。
アンの治癒魔法で全員生き返った。
いや、死んではいなかった。
「お姉様!」
「ペロペロしてください!」
あれ?
女騎士達の矛先がアンに変わったぞ?
「もしかして、このステッキで殴ると魅了しちゃう?」
なるほど。
魅了なのか、新たな性癖の扉を開くのか。
いずれにしろ、殴ったものに好意を寄せるんだね。
「じゃあ、スズメは奴隷契約が不要だったね?」
スズメの頭は、僕もアンもステッキで殴ったからね。
「そうね? 試してみましょう」
ぶちっ。
アンが、スズメの奴隷契約の首輪を無造作に引き千切った。
いや、ちゃんと解除しないと奴隷は死んじゃうよ?
「うげっ」
さすがは王国最強の騎士。
いやもう、何でもそれで済ますんじゃないよ、って感じだけど。
スズメはちょっと唸っただけで、奴隷から解放された。
「どう?」
「はあ、何も変わりませんねえ?」
試すも何もなあ。
いきなり襲いかかって来たりはしないけど。
元々、特に恨みも無かったようだし。
アンとスズメはとても仲が良いし。
悪魔の実ををふたりで採れた時点でそれは確定しているのだ。
奴隷契約は失敗してたのかも知れない。
だって、ブチッと外せるものじゃないもん。
教会に騙されたのかなぁ?
結構高かったのに。
「どうやって、お嬢様と奥様への忠義を示せば? こいつらを殺せばいいですかねー?」
演技とは到底思えない事を、スズメが言い出した。
女の子の演技力に騙されるなと、アンがいつも言っているけどね?
「ダメよ。これは聖国へ売るわ」
「そうでした」
アンが止めたって事は、本気だったんだろうなあ。
女騎士達がもっと早く来ていれば、研究所の護衛として雇ったのに。
奴隷落ちが決まってしまった。
人生とはタイミングと出会いの妙だなあ。
「さあ、早く片付けて、聖国へ行きましょう!」
「「「「「「のじゃー!」」」」」」
のじゃー、流行っちゃった。
研究所3人娘も含めた6名の乙女の、のじゃーがこだました。




