それは物理的に無理よ
「うわ~、もうダメだ~」
おれは泣きそうになっていた。
テストが出来なかったのだ。
「そんなに難しかったかしら? 基本的な問題が多かったように思うけど」
確かに、基本的な問題が多かった。きっと、受験勉強を必死でやっていた頃のおれなら解けただろう。
しかし、勉強をサボると学力は落ちていくものである。
どっかで見たことのある問題なのに、解き方が思い出せない。
「こんなことなら、春休みにちょっとでも勉強しとけば良かった……」
「私も春休みは勉強しなかったわよ」
「はあっ⁉ えっ、じゃあ何でそんなに自信があるんだよ⁉」
「前も言ったと思うけど、私は勉強なんてしなくとも、それなりに良い点がとれるからいいのよ。春休みに勉強をサボったことくらい全然問題ではないわ。そもそも私とあなたでは頭の出来からして違うのよ」
まあ、確かに、おれみたいな一般人と白鳥みたいな黒魔導師の脳が同じなわけないよな。
「それはそうだけどさー。……あーあ、おれにも分けてくれよ、お前の出来のいい頭」
「それは物理的に無理よ」
ただの冗談を真面目に否定された。……黒魔導師が物理的とか言うなよ。
「いや、それはただの冗談だからさ。そんな真に受けて、すごく嫌そうな顔するなって。……あっ、そういえば、何でお前おれにずっと付いて来てんの?」
今まで自然に会話が続いていたので、言えなかったけど。
「……あなたは私の使い魔でしょう。本当だったら、私ではなく、あなたが私に付いて来るべきなのよ」
そうだった。おれ、白鳥の使い魔なんだよな。
「それで、おれはお前の使い魔として何をすればいいわけ?」
呪いの手伝いとかだったら全力で断ろう。
「それは後で教えるわ。とりあえず、私に付いて来なさい」
高校に受かった嬉しさで春休みの勉強をしていなかった高村君。
テスト結果は散々でした。