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白鳥は微笑んでくれているだろうか。
「ここが、清水寺やで」
「清水の舞台から、飛び降りても良いわよ、高村君」
「お前は、おれに死ねと言っているのか」
「勿論、冗談に決まっているでしょう。大事な下僕に死なれては困るわ」
大事な、ねえ……。
「では、写真でも撮りましょう。丁度、桜が見ごろだから」
あの写真と同じ場所だ。
白鳥は、中学の時も、こんな感じで旅を始めたのかもしれない。
薫が近くに居た人に、シャッターを押してくれるよう頼む。
「では、撮りまーす。ハイ、チーズ」
パシャッ。
白鳥は微笑んでくれているだろうか。
「あれが、音羽の滝やね。この滝の水を飲むと、長寿、恋愛、学業のご利益があるで~」
「あなたたち二人は、学業の水を飲みなさいな。……私は、長寿の水でも飲もうかしらね。両親が短命だった分、私が長く生きないとね」
ドキッとした。
やはり、昨夜の話が思い出される。
「あら、どうしたのかしら、高村君?」
「い、いや、何でもねえよ」
悟られないようにしないと……。
作者も音羽の滝では学業の水を飲んだ記憶があります。




