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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんと関西旅行
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まるで、別人だ。



「おれへの毒舌は変わらないけどな」




 これだけは、相変わらずだ。もう慣れたけど。




「美和子だって、秀が嫌いで罵倒してる訳ちゃうで。どっちかちゅうと、好きやと思う。いわば、愛ある罵倒やね。そのうち、罵られることが快感に変わるで、きっと」




「いや、それは絶対に無いから」




 それは、ただのドMじゃねえか。




「……秀に知っておいてもらいたい事があるんや」




 またもや、シリアスな顔になる薫。




「な、何だよ?」




 どうやら重い話らしい。




「……美和子のご両親が亡くなっとるのは、もう知ってるやろ?」




「ああ、白鳥が小学生の時に亡くなったって」




 それを少し寂しそうに話していた。




「……小六の冬頃やった。ご両親が突然の不慮の事故で亡くなったんや。美和子は二人のことが大好きやったから、それはもう大泣きやった。泣いて、泣いて、泣いて、見てるこっちまで辛うなった。……美和子はショックで何も口にしようとせえへんようになった。それを見兼ねたイギリスの祖母さんが、美和子をイギリスに連れ帰ったんや。で、二ヶ月くらい経って、帰って来た美和子は別人のようになってたんや」




 別人のように……。




 薫は、ポケットから一枚の写真を取り出して、おれに見せた。




「これは美和子が小六の夏、わいの家に遊びに来た時の写真や。ご両親も一緒に写っとる」




 写真の中の白鳥は、満面の笑みを浮かべていた。まるで、ヒマワリの様な笑顔だ。




 父親は薫の母の面影が感じられ、端整な顔立ちをしている。




 母親は銀髪で青い瞳で、かなりの美人だ。




「美和子のオトンは、わいのオカンの弟。オカンは弟の忘れ形見の美和子を溺愛しとる。美和子のオカンはハーフや。えらいべっぴんさんやろ。美和子は、この二人のええとこ全部貰うて生まれてきたんや」




 写真の中の三人は、幸せな笑顔を見せている。




「……白鳥、こんな風に笑ってたんだな」




 こんな笑顔は一度も見たことがない。




 微笑むことはあるけれど、こんな満面の笑みは本当に見たことがなかった。




 まるで、別人だ。




「……イギリスに住んどる美和子の祖母さんが、何かしたんやないかって、わいのオカンは言うとる」




「な、何かって?」




 白鳥が以前、イギリスの祖母は本物の魔導師だと言っていた。




 嫌な予感がした。それを聞いてはいけない。




「マインドコントロールによる、性格の書き換え」




 薫の声が、おれの頭の中に冷たく響き渡る。




「誰かと親しくなれば、その人を失った悲しみを感じる。美和子は心が優し過ぎたから、悲しみに耐えられない。だから、誰かと親しくならないように、悲しみを感じないように、心を閉ざした」




 薫の声は冷たい。怖かった。




「……それは、間違っているんじゃないか」




 それは、逃げではないか。




 おれは、震える声で言葉を発した。




「だって、それじゃ……」




 人生、楽しくないだろう?

イギリスのお祖母さんは本当、何者なのでしょう。

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