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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんと関西旅行
70/220

勝負してみるか?



特別、薫の部屋に興味があったという訳ではない。




 今、気付いたのだが、同年代の男子の家に入るのは中学以来だ。




 白鳥に付き合わされていたのと、勉強で忙しくなったから、誰かの家に集まって遊ぶということが高校に入ってから出来なくなった。




 だから、なんとなく気になっただけである。




「入るわよ」




 白鳥がノックをして、扉を開ける。




「…………え?」




 驚いた。




 パソコンが三台あり、部屋の周りが大きな本棚で囲まれていた。辛うじて、ドアと窓の前、パソコンの後ろだけは本棚がない。




 本棚はきっちりと埋まっており、本屋か図書館に来たようだった。




 床には、入り切らなかった本が積まれており、足を踏み入れることが出来そうもない。




 散らかっているというよりは、片付けの途中といった感じだ。




 本の山々の中央に、薫は居た。




 テレビに映るゲーム画面を見ながら、手に持ったコントローラーをすごい速さで操作していた。




「……あ、美和子に秀やん。どないしたん?」




 画面に「YOU WIN」の文字が表示されると同時に、薫が笑顔で振り返って言った。




「相変わらず、足の踏み場もない部屋ね。……驚いたでしょう、高村君?」




「え、うん、まあ……」




「また、本が増えたわね。このままだと、大地震が起きた時、本に埋もれて圧迫死するのではないかと心配になるわ」




「大丈夫やって。見兼ねたオトンが耐震工事を頼んでくれるって言うとったから」




 見兼ねたのか……。




「あのさ、何でパソコンが三台あるんだ?」




 一人が三台も保有していて良いものだろうか。




 おれん家は、一家に一台だってのに。




「ああ、それか。ノートパソコンは持ち運び用やろ。主に使うんは右の新型の方なんやけど、旧型を捨てられんくてなぁ。ほら、何か愛着があるやん? それに、データを丸ごと新型に移すと、重くなるからなぁ」




「そ、そうか。じゃっ、じゃあ、こんなに本があるのは?」




「集めとったら、いつの間にかこうなっとったなぁ」




 つまりは、これだけの物を集められる財力があるということか……。




 流石は白鳥の従兄妹だ。




 よくよく見てみると、本だけでなく、ゲームソフトやDVDなどもあった。大半は本だけど。




 アナログとデジタルが混在した部屋だ。




「薫は、古典マニアでコアゲーマーなのよ。ゲームのプログラミングもしてるのよ」




「ゲーム作れんの? スゲー」




「ネットで知り合った人らに教えてもろうたんよ。いわゆる、オフ会ってやつやね」




 ネット系の単語に弱いおれも聞いたことはあった。




「まあ、そんな事ばかりしているから学業が疎かになるのよね。どうせ、国語と歴史以外は壊滅でしょう?」




「否定はせえへんけどな。でも、授業にはちゃんと出てるで」




 親指をグッと突き出して、爽やか笑顔で答える薫。




「授業に出るのは、当たり前だ」




「でも、部活はサボっているじゃないの」




「自由参加やから、サボりじゃあらへんよ」




「自由参加って。何部だよ。古典部とかか?」





「古典部がうちの学校にもあったら良かったんやけどなあ。わいは普通に野球部やで。ピッチャーやっとるんよ。エースやで、エース」




「自由参加の野球部って……。野球部って普通バリバリやってく部活だろ。いいのかよ、それで……」




「わいの所の野球部、全然期待されてへんし。来年の大会で負ければ、十年連続初戦敗退の大記録や」




「うわ、何その超不名誉な記録」




「部の目標は『目指せ、甲子園(笑)』やし」




 (笑)って……。エースが笑いながら言うなよ。




 こいつの球なら、おれでも打てるような気がするよ。




「薫、高村くんが『へっ、お前のへなちょこ球なんて、おれでも余裕で打てるぜ』って思っているわよ」




「そこまでは、思ってねえよっ」




「ほー、じゃあ、勝負してみるか?」




 薫は、別に怒っている様子はなく、遊びに誘うような感じで言った。

古典マニアでコアゲーマー、野球部所属の逢坂薫をよろしくお願いします!

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