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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんと関西旅行
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な~んも気にしてへんよ



「まずは自己紹介やな」




 白鳥の従兄妹であるという男は、バス停に着くとそう言った。




 おれ達が今から向かうこいつの家には、バスを数本乗り継いで行くらしい。




「わいの名前は逢坂薫や。逢坂の関の逢坂に、源氏物語に出て来はる光源氏さんの息子と同じ薫や」




 逢坂の関は何処かで聞いたことがあるが、光源氏の息子の名前なんて知るか。




「まあ、実際には源氏さんの息子やないんやけどな。色々と複雑やねん」




「薫は古典に詳しいのよ」




 この逢坂薫という男は、外見に似合わず、意外と博識なのかもしれない。




 ちなみに、こいつの外見は爽やかな体育会系だ。新任の体育教師にいそうなタイプ。




「おーさかのせき?」




「げんじものがたり?」




 恵美と勝也が、揃って首を傾げる。




「すまへんなぁ。チビちゃんたちには、まだ分からへんよなぁ」




 そう言って、腰を屈めて二人と同じ視点になった。




 それから、爽やかでとても人の良い笑顔で言った。




「まあ、難しいことは置いといて。わいのことは薫お兄ちゃんって呼んでな」




「うん、私は恵美だよ! よろしくね、薫お兄ちゃん!」




「僕は勝也! よろしく、薫兄ちゃん!」




 なんか、一気に場の緊張が解れた。




 白鳥が子ども嫌いオーラを出していたせいで、弟たちは変に緊張してしまっていたのだ。




 白鳥が子どもに懐かれる姿は全く想像出来ないが、この人は、絶対に子どもに好かれる人だ。




「薫は、私たちと同い年よ」




 身長はおれよりかなり高く、けっこうガッシリした身体つき、対応は年上のお兄さんという感じだが。




「そやで、大阪府立清風男子高校のもうすぐ二年生や」




 男子校なのか、へえ~、ということは置いといてだ。




「同い年ってことは、敬語じゃなくてもいいってことだよな」




「もちろん、ええよ。名前も呼び捨てで構わへんし。それに、わい、敬語はちと苦手やねん。フレンドリーにいこうや」




 フレンドリーという言葉がよく似合う笑顔だ。




「ああ、うん。……そういえば、さっきはゴメン。いきなり怒鳴っちゃって」




「そんな、謝らんでもええよ。気にしてへんから」




 おおらかだなあ……。




 あの白鳥の親戚だとは思えねえ。




 そういえば、何か忘れてるような。何だっけ?




「……あっ、まだおれの自己紹介をしてなかった。えっと、名前は高村秀。高い村って書いて高村。秀は優秀の秀」




 ついでに、もう一人の弟も紹介しておこう。




「で、あいつが次男の優。優秀の優の方」




「……ええ、名前やね。優秀で勝ったり恵まれたり」




 名前まで褒めてくれた……。




「な、なんかどうも。……まあ、よろしく」




「こちらこそ、よろしゅうな、秀。……あ、洒落になってしもたな」




 このギャグは関西弁でしか出来ねえ。




「フン、何だよ、その寒いオヤジギャグ」




 失礼なことを言ったのは、優だった。




「お前、失礼だぞ。ほら、謝れ」




「嫌だ」




「ゴメン、こいつ、最近機嫌悪くて」




「構へん、構へん。な~んも気にしてへんよ」




 笑って許してくれた。




「あ、美和子の自己紹介がまだやったな」




「え、一応したけど」




「どうせ、美和子ろくに話してへんやろ?」




「…………」

この辺りの逢坂君はまだ爽やか好男子の印象ですね。どんどん色んな面が見えてくると思います。

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