目立ちたいとかじゃなくて?
家に帰り、即行で昼飯を作って食べ、後片付けを弟たちに頼み、おれは自転車で青山東駅に向かった。
遅かっただの何だのと、また色々言われてはたまらない。
駅の駐輪場に自転車を停め、白鳥のところへ向かった。
白鳥は駅舎のベンチで、表紙がおどろおどろしい文字で書かれた分厚い本を読んでいた。英語の筆記体で書いてあったので、タイトルが何と書いてあるのかは読めなかった。
おれが声をかけようとする前に、白鳥がおれに気づいた。
「あら、意外と早かったのね」
「まあな。で、儀式ってのはどこでやるんだ?」
「それは、私に付いて来れば分かるわ」
正直、素直に付いて行っている、おれの方にも問題がある。何故かは分からないが、白鳥に従わざるを得ないような気がしているのだ。
あっ、そういえば、白鳥に聞くことがあるんだった。
きっと、なるべく早く聞いた方がいいだろう。
おれは歩きながら、白鳥に話しかけた。
「あのさ、白鳥。……お前って本当に黒魔導師?」
回りくどい言い方をせずに、単刀直入に聞いた。
「いきなり何を言い出すのよ。わ、私は本物の黒魔導師よ!」
白鳥は、突然の質問に動揺を見せた。
「学校で目立ちたいとかじゃなくて?」
「あ、当たり前よ! 私は、目立ちたいなんて、ほんの一欠片も思っていないわよ!」
白鳥は、少し声を荒げて言った。
「そうか、分かったよ。……黒魔術ってのは実際にあるんだな」
おれには、白鳥が嘘をついているようには思えなかった。
「もちろんよ。今度またそんなことを聞いたら、呪うわよ」
「……ああ、もう言わないよ。」
それから歩いている間中、おれも白鳥も何も言わなかった。
白鳥さんに合わせてあげる高村君は優しいですね。