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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
しずかとしょかん
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連絡先交換



「あっ、ちょっと待て。宇宙、今ケータイ持ってる?」


「うん、持ってるけど」


「今度いつ集まるかとか連絡取れた方が便利だろ。ライン交換しとこうと思って」


 ライン交換。


 高校に入って初めて言われた言葉だった。


 高校入学を機に買ってもらった携帯電話のアドレス帳には、未だに父の連絡先と自宅の固定電話のものしか登録されていない。普通に友達のいる高校生ならば、アドレス帳はもっと埋まっているだろうし、メールやライン、その他SNS等を使って様々な人と繋がっているのだろう。まあ狭いクラスの中でさえ友達を作れない僕に、会ったこともない人と友達になれるはずもなく、SNSの類も一切手を付けていなかった。ネットで流行ってることも知らない、所謂情弱というやつだ。


というか、そもそも僕は……。


「ごめん、僕ガラケーだからライン出来ないんだ」


 父はスマホを勧めたが僕からガラケーでいいと断ったのだ。理由は自分が電子機器に疎いためスマホを使いこなせる自信がなかったことと、ラインが普通に面倒臭そうだったからだ。グループラインとか既読機能とか、スタンプとか。


「まあガラケーでもラインする方法もあるらしいけど」


「えっ、あるの?」


「でも面倒だからいいや。久しぶりにメール使うか」


 大久保君がメモにアドレスを書いて渡してくれた。


「おっ、受信成功」


「宇宙君、私も~」


 浅羽さんが僕にケータイを向けながら言う。


「あっ、いいよ」


 意図せず浅羽さんのアドレスを手に入れたのはラッキーだった。


「んじゃ、改めてよろしくな、宇宙」


 大久保君が屈託のない笑みを僕に向ける。


「……こちらこそ」


 こんな笑顔を見たら普通の女の子なら惚れていたことだろう。まあ僕としては、仏像のアルカイックスマイルの方が魅力的だとは思うけど。


「ていうか、ラインもやってないなんて、宇宙は今まで友達とどうやって連絡を取り合ってたんだよ」


 僕の心にグサグサと刺さることを言ってくるじゃないか。


 普通に友達がいて、普通に充実した学校生活を送っている者には、友達がいない日陰者の気持ちなんて分からないのだ。大久保君も学級委員長なら、僕に友達がいないことくらい気付いてくれ。下手に気遣われて大久保君の陽キャグループに入れられるのは勘弁だが、友達系の話題を避けるくらいはしてほしい。


「連絡を取り合うほど親しい友達もいないから大丈夫だよ」


 普通の友達もいないけどね!


「そうなのか、何か、ごめんな……」


「ま、私もあんまりラインする方じゃないし! 人それぞれでいいんじゃないかな?」


 僕と大久保君の間に流れかけた不穏な空気を浅羽さんが消してくれる。


「そうだよな! これからは気軽にメールとかしてくれよ、宇宙! ん、じゃあ今日は解散で」


「うん、ばいばーい」


「また明日」




 僕と浅羽さんだけの秘密だと思っていたことを、実は大久保君も知っていた。


 二人と別れた帰り道、僕は一人で考えていた。


 もしこれが、僕が主人公の恋愛ドラマだったら、ライバル登場で盛り上がる展開なのだろうけど……。主人公は冴えない高校生の僕、ヒロインはしずかとしょかん管理人の浅羽さん、ライバルは完璧モテ男の大久保君、というまあ、よくある三角関係だ。


 ドラマだったら主人公の僕とヒロインの浅羽さんが結ばれてハッピーエンドだが、現実がそう簡単に行く筈がなかった。


 現実は厳しく、僕が大久保君に勝てる要素なんて全然思い浮かばなかった。


 まあ、これは大久保君が浅羽さんを好きであった場合の話なんだけど。







この作品が書かれた時代はガラケーとスマホの過渡期でした。

宇宙君はラインが面倒臭くてガラケーを選びました。

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