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二人だけの秘密
次の日の朝。
教室に入った瞬間、浅羽さんと目が合った。
挨拶でもしようかと思ったけれど、浅羽さんが、人差し指を口に当てて、しーっと、淡く微笑んでいたので、口を閉じた。
そういえば、昨日、しずかとしょかんから帰る時に
「しずかとしょかんのこととか、本当の私のこととかは、他の人には言わないでね」
と言われたことを思い出す。あの笑顔のせいで頭がぽーっとしていたので、今まで忘れていた。浅羽さんは、きっと内緒にしておいてと言いたいのだろう。確かに、こんな場所があるなんて多くの人に知られたら、大変な騒ぎになる。しずかとしょかんは、静かな図書館ではいられなくなってしまうだろう。
僕は、何事もなかったかの様に、自分の席に着いた。
この教室の中で、しずかとしょかんのことを知っているのは、僕達二人だけなのだ。
なんだか僕と浅羽さんだけの秘密みたいで、嬉しかった。
しずかとしょかんは本好きのクチコミで広がることなく、狭いコミュニティを守っています。




