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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
高村君の道
222/228

彼はキューテイ大志望よ



 その日の放課後。




 おれと白鳥は本日の恋愛相談室、最後の客を見送り、いつも通り教室に二人きりになっていた。こんな風に書くと特別のことのように思えるが、まあ何も起こる訳でもなく、普通に帰宅するだけだ。




「それじゃあ、あなたの悩みをお聞きしましょうか」




 帰ろうと立ち上がったおれに、白鳥が声をかける。




「え、悩みって……。もしかして今朝のやつのこと?」




「ええ。今日は特別にあなたの進路相談に乗ってあげるわ。そうね、お礼に……」




「って、見返りを求めるのかよっ」




「お返しは気持ちだけで結構です」って、恋愛相談のポスターに書いてあったくせに。




「冗談よ。……それで、何をどう悩んでいるのかしら?」




 おれは相談者の位置である白鳥の正面に移動する。こうやって正面で話すのは少し緊張する。




「どう、っていうか……、不安なんだよな。上手く言えないけど。漠然としてる感じだよ」




「ふうん」




 白鳥は興味があるのかないのか分からない顔をしている。おれの説明が下手過ぎて呆れているのかもしれない。




「ていうかさ、お前は不安じゃねえの? こういう自分の進路への漠然とした不安感って、全国の受験生に共通してるもんだと思うけど」




「まあ、あなたほど心配してはないわね」




 そうだよな。こいつはこういう奴だ。元々頭は良いみたいだし、テスト前に焦って勉強する姿も見たことがない。高校受験の時だって、それ程勉強してないらしいのに俺と同じ学校に受かっている。




「それに、私このまま順調に行けば多分推薦がもらえるでしょうし」




「推薦! マジかよ、聞いてねえよ」




「まだ多分という段階だから言わなかっただけよ」




 推薦、か。白鳥の志望大学は英語に強い所で、留学者多数らしいからな。帰国子女で成績だって申し分ない白鳥は適任だ。




「何かさ、お前といい薫といい烏丸といい、皆受験生っていう危機感がねえよな」




「そうね。薫は教員免許の取れる大学に進むらしいわ。試験に数学がないからいけるとも言ってたわね」




「あいつ、小学校の先生になりたいんだっけか。子ども好きって言ってたもんな」




 あの笑顔で子どもと戯れる姿が容易に想像できる。




「あ、そういえば、烏丸はどうなんだよ。あいつこそ勉強してねえだろ」




 でも学年トップ。クソむかつくぜ。




「ああ、烏丸君? 彼はキューテイ大志望よ」




「宮廷大? 何だ、あいつそんな金持ちしか通えないようなとこ狙ってんのか」




 白鳥の志望大はそこじゃねえぞ。ていうか、何だその大学、聞いたことねえ名前だし。




「馬鹿ね、高村君。旧帝大よ、旧帝大。現在の東京大学」




「えっ、あの東大⁉」




「ええ、日本の最高学部の東京大学よ」




「マジかよ……」




 頭の良い奴だとは思っていたが、まさか東大志望クラスとは……。勉強してないくせに、もし受かったら本でも出せるんじゃないか。「勉強せずに東大に受かる方法」的なやつ。

高村君以外は進路に迷いがないみたいですね。

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