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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
烏丸君の家族
213/221

ちょっと、出掛けようか



 春休みの四日目。




 午後六時頃、突然メールの着信音が鳴った。差出人の名前を見て、思わず笑みが零れる。メールの内容は若干意味が分からないものだったが、すぐに返信した。とりあえず指示に従うことにしよう。




「ちょっと、出掛けようか」




 その言葉に「彼」は黙って頷いた。







 三十分以上もかかってしまった。白鳥さんを待たせるなんて、したくはなかったのだけど「彼」を家に置いておくのも憚られた。だから、連れて来てしまった。「彼」を自転車の前カゴの中に入れ、自転車を押して歩いてきた。超安全運転で。




 ショッピングセンターの駐輪場に自転車を止め、店内に入る。そしてエスカレーターで二階に昇る。後から来たメールによると、白鳥さんはフードコート付近にいるそうなので、そこに向かう。「彼」は僕の後ろに隠れるようにして付いて来ている。




 遠目からフードコートが見えた。歩きながら、白鳥さんを探す。……発見。クレープを食べてるみたい。可愛いなあ。あれ、隣に誰かいる。誰だっけ、あいつ。……あ、高村君か。そういえば、一緒にいるんだった。何かデートしているように見えなくもないし。邪魔だなあ、本当に邪魔だなあ。死なないかな、高村君。




 さすがに、それは冗談だけど。こんな感じでいいんだよね、明るく語るのって。




「白鳥さん」




 と、彼女達がいるテーブルの傍まで行き、声を掛ける。




「あら、烏丸君。意外と遅か……」




 白鳥さんの言葉が止まる。彼女の視線の先には、僕の後ろに隠れている「彼」の姿があった。




 幼稚園児くらいの小さな男の子の姿が、そこにあった。




「あ、この子? 僕の新しい家族だけど」




 我ながら、さらりと、本当にさらりと言った。




「え?」




「は?」




 表情が固まる白鳥さん、と高村君。




「って、嘘っ⁉ え、でも、それは……」




 混乱する白鳥さんも可愛い。




「え、マ、マジかよ。お前が産ん……って、んな訳ねえ」




 高村君は、うざったいけど。




「そう、そんな訳はない。……この子はさ、僕の弟だよ。つまり、烏丸家三男。ちなみに三歳」




 落ち着いた口調で言ってはいるけれど、僕自身もまだ事実を受け入れ切れていない。これを知ったのは、ほんの数時間前のことだ。「彼」を「この子」や「僕の弟」と呼ぶのに、抵抗やためらいを感じている。




「お、弟っ⁉」




「ちょっと、何、大声出してるのよ。また怒られるわよ」




 驚きを隠し切れない高村君を、白鳥さんが咎める。また怒られる? 僕が来る前に何があったのだろうか。




「烏丸君、場所を移しましょう」




「そうだね。あまり騒がれて目立っても困るし、詳しい事をこんなオープンな場所で話す気もないからね」




 何処で誰が聞いているか、分からないのだから。



烏丸君に弟が!?

どういうことなのでしょう……。

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