どうしようもない家族。
家族の温かみというものを知らなかった。
僕は、自分の家族を本当の家族と呼べる自信がない。
高村秀や逢坂薫が話す、家族の話に共感が出来ないのだ。家族揃って夕食を食べた経験も、親に叱ってもらった経験も、何も無いのだから。
冷めた家庭という言葉があるが、そんなレベルの話ではない。僕の家庭は、家族は、終わり過ぎるくらいに終わっていた。成立もしていなかったかもしれない。
既に両親を亡くしている白鳥美和子でさえ、家族の温もりを感じている。両親はもういないけれど、思い出の詰まったあの屋敷には、彼らの温もりや思いが残っている。いないのに、いるように感じる。僕のそれとは、全く違う。
いないのに、いるように。
いるのに、いないような。
どちらも「家族」なのに。
酷い両親と、可哀想な兄と、心の無い弟と……。
本当にどうしようもない家族。
これは、そんなどうしようもない家族の物語。
そして、再出発の物語でもある。
もう終わってしまった家族を、無理やり立て直して、再び始める。
嘘でもいいから、やり直す。
これは、そんな前向きな物語。
嘘吐きで病んでいる僕が、必死で前向きに語る物語。
さあ、始まりの鐘が鳴る……。
烏丸君渾身のプロローグです。
烏丸君の前向きな語りにご注目下さい。




