こんな所で何やってんだよ?
五分が経った。
高村君はまだ商品を手に持って何やら悩んでいるようであり、私はそんな彼をショーケースの影から見詰めていた。これではストーカーみたいね。表現を変えましょう。見張っていた、観察していた……。より印象が悪くなったような気がする。
烏丸君からの返信はすぐに来た。もう三十秒経ってないくらいの早さで。きっと今、こちらに向かっている途中だろう。移動手段は多分自転車だから、少なくとも後十分はかかる。
烏丸君が来るまで、この場をどう持たせるか。
高村君は、まだレジに行く気配は見せない。
あら、そういえば高村君はその商品を買うのかしら、それとも、ただ見てるだけなのかしら。まあ見てるだけというのではなく、見比べているという方が正しいのだけれど。いや、穴の開く程見ている、観察している、凝視している……。これでは、ただの変態だ。
もし買うのだとして、どのように使うのだろうか。
……………………。
さすがに、それはないわ。
私の中二病よりも痛い、痛々しい。
自分の想像の中の高村君に、ドン引きした。
ブルルルルル。
「きゃっ! 何っ⁉」
私の手の中で何かが震えた。
スマホのバイブ音だった。電話が来たことを知らせるためのものだ。突然の事に驚いて、スマホが手から滑り落ちる。
しかし、もう手遅れだった。スマホじゃなくて、私が。
「あれ、白鳥?」
スマホを咄嗟にキャッチすることが出来て安堵している私に、よく知っている声が掛けられる。
手の中のスマホに目を向ける。電話の発信元は高村秀、そして目の前にいるのも高村秀。
「こんな所で何やってんだよ?」
平然とした口調で聞く高村君。
「ていうか、何でいるんだよ。エスパーかよ、お前は。あ、いや白魔導師なのか。まあ、丁度いいや。お前にちょっと聞きたいことが……」
携帯電話を閉じながら、おそらく電話の用件を言おうとする高村君。
しかし私の叫びが、それを遮った。
「そ、そ、そっちこそ何をしているのよっ! この、少女趣味っ!」
その言葉で、周りの買い物客の注目が私達に集まる。
「ちょ、お前いきなり何言い出すんだよっ」
ちょっとした騒ぎになった。
ええ、怒られました、店員に。
しかも、カップルと間違えられたらしく「痴話喧嘩は外でして下さい」と言われた。最悪だ。
ほとぼりが冷めた後、高村君から事情を聞いた。
「妹の誕生日プレゼントなら、先にそれを言いなさいよ。全くもう、私に恥をかかせないで頂戴」
「勝手に勘違いしたのは、お前だろうが」
「うるさいわね、ブラコンシスコンロリコン」
「ロリコンは違うぞ、断じて」
「……そういえば、私への電話の用件は何だったの?」
「ああ、それか。……誰にするか決められなくてさ。それで、お前に決めてもらおうと思って」
高村君の指し示す先には、桃、青、黄、紫色の四人の変身セットがあった。
何で、私に決めさせるのだ、と思ったけれど。
「じゃあ、青」
自分の好きな色を即答した。
「適当に決めただろ、今」
それはまあ、そうだけれど。
「あなた、こんなことで何十分も悩んでいたなんて、本当にシスコンなのね」
「シスコンで何が悪い」
「そこは開き直らないで」
結局、今回の話は私の失敗談であった。
ああ、勘違い、という感じ。
本気で高村君の趣味に不安を覚えた。
誤解だと分かったから良かったけれど。
全くもう、どうでもいいことで優柔不断なんだから。
では、後日談。
というか、この直後の話。
いや、次回予告?
烏丸君の衝撃的事実が発覚!
Coming soon!
さて、どの頃のプリキュアでしょう?




