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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
高村君の休日
203/221

どうせ暇なのでしょう?



 春……。人々の出会いと別れを桜が演出する季節……。






 とはいっても、春休みを直前に控えた三月の半ばは、桜の開花はまだ先だった。それに、出会いも別れも特になかった、今の所は。




 それで新たな出会いを求めて、という訳ではないけれども、おれは今お出かけ中である。




そんな遠くに行くのではなく、普通に市街をぶらつくだけだ。目的といえば、新学期に備えてノートとかの用意をするだけだけれど、それも何か後から付けた理由な気がする。




要するに、何かヒマだったから、ちょっとその辺ブラブラして来るか、ということなのだ。




え、一人でだよ? 誘う相手がいないとかじゃなくて、




今日は一人でブラブラしたい気分なんだよ。まあ仮に、烏丸を誘ったとしても「え、君と二人でお出かけ? ちょっと、冗談は止してくれよ。嫌だね、お断りだ。というか、君もヒマなんだねえ。街をブラブラする時間があったら、勉強でもしたら? まあ、君は勉強をしてもそんなに頭は良くなりそうにないけどね」とか言われるだけだしな。




 それに、今日の星占いで「街にお出かけに行くと何か良いことがあるかも~」と言っていた。その「良いこと」とやらを期待してみたり……。




「あら、高村君じゃない」




 と、知り合いに声を掛けられた。というか、おれの御主人様に。




「こんにちは、高村君。こんな所で会うなんて奇遇ね」




「そうだよな。偶然ってのはあるもんだ」




 休日だし、白鳥は私服だった。しかも、お出かけ用の可愛らしいワンピース。下僕生活を二年もしていれば、白鳥の私服を見る機会だって、それなりにある。でも今更ながら、こいつは美少女なんだなあと思う。そんな美少女・白鳥の可愛い私服が見られたんだから、これは良いことなのだろう。




「それで、こんな所で何をしているの? 何か市街に来る用事でもあるのかしら?」




「用事っつっても、ノートとか買うだけだよ。でもまあ、ヒマだったから、そこら辺をブラブラと歩いてるだけ」




「そう。本当に暇なのね。でも、あなたって、暇だったら家の中でゲームでもしていそうなタイプなのに。もう十時間くらい、ぶっ続きでやっているイメージよ」




「そのゲームオタクは薫だろ。ていうか、おれってそんなインドアなイメージなのかよ。今まで、そんな描写ないだろうが。適当言うなって。まあ人並みにゲームはしてるけど、おれはどちらかといえば、アウトドアだよ」




 中学時代はサッカー部だったんだぜ。それに白鳥に呼ばれれば、どこへでも付いていったし。




「ふうん、そうだったの」




「そういうお前は何をしてるんだよ? 住吉とお茶会でもすんのか?」




 二人が行き付けというカフェも近くにあるし。




「いいえ。今日は一人カラオケに来たのよ」




「一人カラオケか……。少し前に流行ってたみたいだけど、今はあまりその話題を聞かないな」




「世間に定着して、一般的になったんじゃない?」




 ああ、そういう見方もあるか。




「てか、お前もヒマ人じゃねえか」




 どうせ家でダラダラ過ごしてる時に「そうだ、一人カラオケに行こう」とか、いつもみたいに唐突に思い付いただけに違いない。




「いえ、私は高村君とは違って、明確な目的があるのよ」




「何だよ?」




「来週、女子会でカラオケに行くのよね。それの練習よ。ほら、双葉って歌がとても上手いじゃない? あの子に負けたくないのよ」




 去年の音楽の授業で知ったことだけど、白鳥は歌が上手い。しかし住吉はそれ以上だ。演劇部の発声練習の賜物であるよく通る声、そして気持ちの入れ具合。




「でも意外だな。お前が勝ち負けにこだわるなんて」




「何よ、悪い?」




 少しムキになる白鳥。ちょっと可愛い。




「いや、全然悪くねえよ。良いと思うぜ、おれは」




 普段はドライなくせに、変なとこで燃えるんだよな。




「そう。……ねえ、高村君。私と一緒にカラオケに行かない? やっぱり誰かに聞いてもらった方が良いと思うのよね。あなた、どうせ暇なのでしょう?」




 断る理由はなかった。

高村君の仮想烏丸君は酷いこと言いますよね。

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