ハッピーバースデー
「ていうか、おれ達って超器用!」
ケーキ作りの、あまりの手際の良さに、思わず叫んでしまった。
「意外と簡単だったね。レシピ見れば、誰だって作れるものだね」
「白鳥は作れないけどな」
「美和子は不器用やからな」
料理なんて、ほとんどしないから、家庭科の調理実習で悪戦苦闘していた。
「白鳥さんは、そこが可愛いんじゃないか」
「そう言うと思ったよ」
とりあえず、ケーキは冷蔵庫に入れておいて、ツリーの飾り付けに入る。
時間は午後6時を回っていた。白鳥が帰るまで、あと数時間くらいだ。
「そういえばさ、高村君。君と白鳥さんは、去年は二人だけだったんだろう。とてもとてもムカつくことだけど、君は去年どのようにクリスマスを過ごしたんだい?」
白鳥と出会った最初の一年、つまりまだ高一だった頃のこと。薫とはまだ会ってないし、烏丸の秘密を知る前、今となっては懐かしいともいえる、あの頃。
それを思い出しながら、答える。
「あー、うん、実は去年、おれは白鳥の誕生日を、うっかり忘れてたんだよな。『メリークリスマス』っていうメールをしただけで、自分は誕生日にもクリスマスにもプレゼントを貰っておきながら、な」
年賀状にわざわざ「12月25日は私の誕生日だったのだけれど、どうやら忘れていたようね」という文句が書かれていて、新年早々、謝罪しに行ったことは苦々しい思い出だ。
「サイテー」
烏丸が軽蔑の視線を、おれに向ける。
「そう言われても仕方はないと思うよ。だけど、だからこそ、今年はちゃんと祝ってやりたいんだよ」
散々、話を脱線させたりと回り道はしたけれども……。
白鳥が喜んでくれれば、おれはそれで満足なのだから。
数時間後。
白鳥邸の玄関扉が開く音がする。
軽やかな足取りが、真っすぐこちらに向かっている。
部屋のドアが開かれ……。
「ハッピーバースデー」
白鳥さんの誕生日をどのように祝ったのかは皆さんのご想像にお任せします。




