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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんのバースデー
189/221

白鳥に試されてるんだよ



 至らないおれの至らない状況説明。とりあえず、明日は白鳥の誕生日だ。御年17歳の。それで、誕生日を祝おうと、おれ達は集まったのだ。家主の白鳥が出かけている、この白鳥邸に。勿論、白鳥の許可は取ってある。いくら従兄妹の薫が合鍵を持っているからといって、いくら主従だからといって、女子の家に無断で上がり込むというのはダメだから、というか犯罪だから。一応、勉強のためといってサプライズは誤魔化しているけれども、きっと多分バレている。




 そんな状況である。




「で、まあ、白鳥がいないこの機会に、さっさと飾り付けして、ケーキでも作って、プレゼントでも考えようってことなんだけど」




「あ、そういえば、何で美和子おらへんの?」




 今日、12月24日、即ちクリスマスイブに、白鳥美和子は出かけている。サプライスと分かって、気を利かせて出かけてくれたのではない、元々その予定だったそうだ。




「ああ、女子会だよ、クリスマス女子会。クラスの女子で集まって、ご飯食べたり、二次会でカラオケ行くとも言ってたな。今日は帰りが遅くなるし、夕飯も食べてくるから、いらないってさ」




「何で、僕には言ってくれなかったんだろう。教えてくれたら付いていったのに」




「『女子』会だぞ。男子が入れる訳ないだろうが」




 それに烏丸が来たら大騒ぎだ。あらぬ歓声が上がるわ。




「でも野宮君とか、普通に紛れてそうだよね」




「確かに、紛れていても違和感はないが、野宮は男だ。ああいう外見で、乙女男オトメンで、お前に告白をしたけれども、男だ」




「キャラ濃いなあ、野宮君」




「まあな」




 メインキャラでもないのにな。おれのキャラが薄いのかな(泣)。




「そんなに落ち込まんくてもええで、秀。……で、美和子は女子会で何を話しとるんやろね。気になるわ~」




「おれの悪口に決まってるだろ。あいつの十八番は、おれの粗探しをすることなんだから。本人がいないからって、好き放題言っているに違いない」




「君、その手の罵詈雑言は言われ慣れてるじゃないか。女子会に変な偏見を持つのはやめなよ。見苦しいから」




「そうだな。白鳥は、おれがいようがいまいが、お構いなしだもんな。……でも、愚痴ってるんだろうな、色々と」




「そりゃあ、ねえ」




 お前に対しての愚痴は一つも出ないだろうがな。




「そういえばさ、何で、女子会はあるのに、男子会はないんだろうな」




「ああ、でもあるんちゃう、男子会。あまりクローズアップされないだけで、細々とやってはるで、男子会」




「華がないからな、男子会」




「ムサいだけやしな、男子会」




「お前って男子校通ってるんだろ。毎日が男子会だな」




「そう考えると嫌やな。男子同士でポッキーゲームとか、もうカオスやったな」




「え、マジで、そんなことしてんの?」




「まあ、ノリのいい奴はな……」




「君達さあ、話逸れ過ぎ。白鳥さんの誕生日を、どう祝うかって話でしょ」




 烏丸が話を戻す。雑談を突然、打ち切られた。




「ああ、とりあえず、あそこにあるツリーやらオーナメントやらを飾り付けて……」




「準備がええね」




 来たときから置いてあったんだけどね。多分、白鳥が置いたのだろう。




「誕生日ケーキも作る。ここに資金の一万円があるから、これで材料を買って作る」




 おれはポケットから、ぴらっと福沢さんを取り出す。




「白鳥さんから貰ってたの?」




「まあな。おれが余裕で万札を出せる訳がないだろ。万年金欠なんだから」




「白鳥さんのために作るものに、白鳥さんのお金を使わせてもらうっていうのも情けない話だけどね」




「しょうがねえだろ、くれたんだから」




 正しくは置いてあったのだが。白鳥とは玄関で少し話しただけで「誕生日を祝って」なんてことは一言も言っていなかった。テーブルの上に「使いたければ使いなさい」という書置きと共に一万円が置いてあっただけだ。




「美和子、誕生日を祝ってほしいんやろね。素直に口には出さへんけど」




「ツンデレだからな、あいつ」




 あくまで自称であり、9割以上がツンなのだれど、たまに、ごくごくたまに、デレは見られる。誕生日を祝ったら、白鳥はデレてくれるかな。




「で、飾り付けやケーキ作りはいいとして、問題はプレゼントだよね。ケーキの材料だけで一万円も要らないでしょ、残りでプレゼントを買えってことさ」




「でも、白鳥は金銭感覚が狂ってるからな。一万円相当のケーキを作れってことかもしれない」




 女子会でクラスの女子(20人)全員分を余裕で奢ってやれる奴だぞ、白鳥は。




「それは無理やろ。わいらの力じゃ一万円相当のケーキなんて作れへんし、いくら秀が料理上手いゆうても、パティシエやないんやから。もし作れたとしても、一日じゃ到底無理や。まずは材料のお取り寄せから始めなならんし」




「だよなー。やっぱプレゼントか……」




「白鳥さん、何が欲しいんだろうね」




「ていうか、あいつの場合は、欲しいものがあったら、すぐに買うだろうしな」




 家がプチセレブで、金は余る程あり、節約なんてしないのだから。




「それに、女子会でもプレゼントもらうだろうしね」 




 白鳥は人気者だし、女子は気が利くから、何かしらは用意しているだろう。




「そういえば、同性にプレゼントを贈るよりも、異性にプレゼントを贈る時の方が失敗する確率が高い、って聞いたことがあるな」




「そりゃ、そうやろね。基本、男子よりも女子の方が、そういうセンスはあるやろ」




「だよな。おれも自分にセンスがあるとは思えないし」




 薫と烏丸は、どうだろうか。二人とも、おれよりはセンス良さそうだけど、ぱっと見は烏丸の方がありそうだよな。イケメン=センスが良いっていうのも偏見だけど。




「なあ、烏丸、お前ってセンスある方?」




「ん? 扇子がどうかした?」




 そう来るのかよ……。文脈を読んでくれ。この場面で、その洒落はナンセンスだぜ。




「いや、いいよ。何でもない」




 センスのないイケメンって、どうなんだろ。ギャップ萌えになるのかな。




「それはギャップ萌え、ならぬ、ギャップ引きやろ」




「ギャップにドン引き、嫌だな、それ」




「何で、そんなに話が飛ぶのかな、君達は。扇子やらギャップやら、もう訳が分からないよ」




 そんな会話をしつつ、白鳥に贈るプレゼントを考える。




「何も、プレゼントが物でなくてはならないって訳じゃないんだから……。サプライズで祝うってだけでも、プレゼントにはなるんじゃない?」




「いや、これはサプライズじゃないんだよ。白鳥は多分、いや絶対に分かってる。おれ達に誕生日を祝われることを分かってるんだよ。……あのツリーとか資金とかも用意してあったし、言ってみれば、仕組まれた誕生日ってところだ。白鳥に試されてるんだよ」




「ハードルが高いね。……う~ん、だったらイベントというか、ゲームみたいなものはどう?」




「例えば?」




「王様白鳥さんゲーム」




「何となく分かるけど。……それは、おれにとっての日常だ」




「合コンやないんやから。それは却下やろ」




「じゃあ、もういっそ玉砕覚悟で、何かプレゼント買ってみる? ……僕は扇子でも買おうかな。白鳥さんに似合う優雅なやつ」




「季節外れ感ハンパねえし。それに、さっきの会話を引きずるな。わざと蒸し返しただろ」




「まあ、それしかないやろな。それぞれプレゼント買おうや。たとえ、選ぶセンスがなくても、な」




「高村君が何で、そんなに気にしてるのか分からないけれど、白鳥さんだって、祝ってくれた人に文句を言うほど、鬼じゃない」




「そりゃ、そうだけど」




「女神だよ」




「………………」




 白鳥へのリスペクトがハンパねえ、怖いよ、烏丸……。




「何、固まっているの? さっさと買い出しに行こうよ」




「……はい」

烏丸君、センスない説。

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