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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
あの空に捧げる回想録
158/225

一位なんてどうやったら取れるんだろう。

 三年生になって、周りが受験モードに突入した。


 それに伴い、心霊研究会は活動休止のような状態になった。四月・五月頃は第二理科室に集まっていたが、中間テストに入った辺りから、集まる回数は徐々に減っていき、最近は全く集まらなくなった。白鳥さんが脅しで入れた新入生は、皆すぐに来なくなってしまったし、白鳥さんとまたクラスは別だったので、彼女の様子もよく分からない。きっと勉強で忙しいのだろうと思っていた。




 一学期の終了式の後のことだった。


 久しぶりに、白鳥さんに声を掛けられた。


「こんにちは、橘君。元気にしてる?」


「あっ、うん、まあ」


「そう。……今から、先輩の家に行ってみない?」


「先輩」という言葉を聞くのも久しぶりだった。


「えっ、でも先輩の家って今は青森だよ」


 もしかして、青森の先輩の実家まで押し掛けてびっくりさせようということなのか。


「青森の方ではないわ、引っ越し前の方よ。……考えてみれば、私達って先輩の家には一度も行ったことないし、第一、何処にあるかも知らないわよね」


「そういえば、そうだね」


 先輩は僕や白鳥さんの家にはよく来たくせに、自分の家に招いたことは一度もなかった。


「それで、気になったから先輩の元担任に家の住所を聞いてきたのよ」


 個人情報を易々と教えちゃうんだ……。


「でも家に行った所で、先輩はもうそこには居ないけど、それでもいいの?」


「ええ。一軒家らしいから、家だけは残っていると思うわ。あなた、あの先輩がどんな家に住んでいたか、気になるでしょう?」


「……気になる」


 ただの好奇心だった。




 ここで引き返していれば、真実を知らずに済んだのに。




「……あなたとこうして話すのも、久しぶりね」


 先輩の家に行く途中の道で、白鳥さんが言った。


 先輩の家は校区の端の方だったので、それなりに距離がある。


「そうだね。お互い、勉強で忙しいし」


 受験生だから。


「私はそれ程、勉強はしていないけれどね。……橘君、あなた最近、頑張っているわね。この前の期末テストなんて、学年五位じゃない。ついに私を抜いたわね。この成績なら、緑ヶ丘も狙えるんじゃない?」


「うん、保護者会でもそう言われたし。思い切って、志望校は緑ヶ丘にするつもりだよ」


 三年生になって、僕の成績は格段に伸びた。


 何か勉強しないといけないかなと思って、今までよりも頑張ってみたら、案外いけるものだと分かった。


「そういえば、白鳥さんの志望校って何処?」


「桜木高校よ」


 少し驚いた。白鳥さんもてっきり緑ヶ丘だと思っていたから。


「えっ、桜木? 白鳥さんの成績なら、緑ヶ丘でも十分行けると思うのに……」


 白鳥さんはテストで十位以内なんて、僕より多く取っているのに。


「緑ヶ丘は少し遠いでしょう。きっと今よりも更に早く起きなくては間に合わないわ。私、朝は苦手なの。その点、桜木なら今まで通りの時間に起きても十分、大丈夫」


「……そうなんだ」


 大切なのは距離とかじゃないと思うけどなあ……。


「……あのさ、思うんだけど、何気に先輩って凄いよね。テストで学年一位の座を一度も譲ったことなかったし」


 五位を取るのも、あんなに頑張ったんだ。一位なんてどうやったら取れるんだろう。


「そうね。私も一位は取ったことないわね。……先輩がああ見えて実は、必死に勉強していたら面白いわよね」


「確かに……」


 先輩が必死になって何かをしている姿は想像し難い。


 いつも、へらへら笑いながら、淡々と、楽観的に、少なくとも僕にはそう見えていたから。

白鳥さんは特に受験勉強をせずに桜木高校に入学します。

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