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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
あの空に捧げる回想録
157/225

ついに私も卒業か……。

 ◇




 卒業式の日。


「ついに私も卒業か……。長い様で短い三年間だった」


「卒業おめでとうございます、先輩」


「まあ、おめでとう」


「何だ、白鳥後輩。折角の卒業式なのにデレてはくれんのか」


「嫌」


 私、彼の前でデレたことなんてあったかしら。それと、人を勝手にツンデレキャラにしないで欲しい。


「それに、君達は私の卒業に涙も見せてはくれぬのか」


 周りには、部活動の先輩との別れを悲しんで泣いている生徒もいた。


「僕達に、感動出来るようなエピソードなんてありましたっけ?」


「皆無だな」


 私達の関係性は、他の部活のそれとは何か違う気がした。一緒に厳しい練習を耐え抜いた訳でも、大会で涙を流し合ったこともない。


「それにしても、先輩、卒業式にその眼鏡はないですよ」


 先輩の眼鏡はフレームが曲がり、レンズにひびが入っている。しかもそれをテープで止めている。


「昨日、足を滑らせて転んでしまってな。もうスペアもないので、応急処置をしておいた」


 タイミング悪過ぎでしょう。


「でも滑って転ぶなんて、受験生的には縁起悪いわね」


「そうですよ、もうすぐ受験本番なのに」


 卒業式が終われば、先輩はすぐに青森に引っ越す。引越しが終われば、受験である。


「なんとかなるだろう。それに、私は縁起とかそういう類のものは信じておらん」


 まあ、先輩が本番ミスるなんて、ないとは思うけど。


「何、青森とここなんぞ夜行バスですぐだ。一生、会えない訳ではない。君達が寂しがるといけないから、たまには遊びに来てやる」


「さ、寂しがる訳ないでしょ」


「また強がりを」


「強がりじゃない」


 悔しいことに、先輩には気持ちを見透かされてしまうのであった。


「では、そろそろ行くとしよう」


「……お元気で」


「さようなら。べ、別に帰って来なくてもいいのよ」


「ではな。……またいつか」




 それが鷲羽真琴を見た最後だった。


 彼の言った「いつか」はまだ訪れていない。



ついに鷲羽先輩も卒業です。

でも卒業後には会えていない様子……。

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