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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
あの空に捧げる回想録
153/221

幽霊がいたらいいな

 次の日は京都に行った。


 しかし、白鳥さんが熱中症でダウンしてしまった。


 セバスチャンさんと逢坂君が、タクシーで白鳥さんを家まで送って行ってしまったので、僕と先輩は仕方なく二人で京都を回ることになった。


「白鳥さん、大丈夫かな……」


「まあ、大丈夫だろう」


「楽観的ですね」


「で、何処か行きたい所はあるか?」




「二人だけで話すというのも珍しいな」


「あ、そうですね」


 平等院鳳凰堂からの帰り道。ここから宇治駅までは徒歩。それから京都駅、大阪駅までは電車で、その後はバスを数本乗り継いで逢坂君の家まで帰らねばならない。


「良い機会だから話すが……。白鳥後輩は、今流行りのツンデレというやつだよな」


「デレなんて、何処にあるんですか」


 ツンの方しか見たことない。ていうか、いきなり何を言い出すのかと思えば……。


「よく見ていれば分かるものだよ。それに、君はもっと人と関わった方が良い。人は千差万別で面白いからな。色々な人と関われば、自ずと見えてくるものがあるぞ」


「……そうですかね」


 僕はあまり人とコミュニケーションを取ることが得意ではない。先輩はそれを見据えて言っているのだ。


「……あの、ちょっといいですか?」


「何かね」


 先輩に聞きたいことがあったのだ。


「先輩って、実は怪奇現象とか信じてないですよね。白鳥さんの黒魔術もバカにしてるし、幽霊は見間違いだって否定してるし。自分は超能力者って言っている割にはマジックしか見せないし。おまけに科学研究会の人とも親しいし。……何で、心霊研究会なんて発足したんですか?」


「一言で言えば、楽しそうだから、だな。まあ幽霊がいたらいいなくらいには思っているが。しかし、その存在を信じている訳ではないさ。……私は自分の目で見たもの、きちんと証明出来たものしか信じん主義でね。残念ながら、幽霊をこの目で見たことは一度もない」


 確かに、心霊スポットの探検をしている時の先輩はとても楽しそうだった。顔はとても大人びているのに、時折、無邪気な笑顔を見せる。


「でも、視覚でさえも疑い得るものなんですよね?」


「ああ、そこが難点なのだ。私とて万能ではない。見間違いも勘違いもある。……証明も突き詰めていくと嫌になるぞ。天動説と地動説なんて良い例だな。昔はプトレマイオスの天動説が常識で、地動説を唱えようものなら裁判に掛けられた。しかし今、天動説を信じている者はただの阿呆だ。この様に、現在の常識がいつまでも変わらないとは言い切れん。千年後にはトンデモ理論が正論になっておるかもしれん。……結局は何が『正しい』のかなんて誰にも分からん。ましてや、その辺の中学生が論ずることではない」


「……あの、話が難しすぎてよく分かんないですけど」


 下手に頭が良過ぎるのも考えものだ。常にこんなことを考えているのでは、頭がパンクしてしまう。


「そうか、難しいか。では忘れてくれたまえ」


 あっさりしてるな、本当に。


「それと、もう一つ。この際ぶっちゃけますけど、先輩、本当は超能力者じゃないですよね」


「何を今更……。ああ、君が思っているような超能力は私にはない。ただ言ってみただけだ」


 やっぱり……。適当なんだか、ちゃんとしてるんだか。


「でも私が思うに、超能力とはただの凄い能力だと思う。料理を食べただけで何が入っているか分かるなんたらソムリエも、盲目のピアニストも、常人からすれば超能力みたいなもんだろう。そこでだ、人間にはそれぞれ何か一つくらいは超人的な能力が備わっているのではないか、と私は考える。偉大な記録を残したアスリート達は、その能力を見つけ磨くことが出来たから記録を残せたのだ。……私にもまだ何かは分からぬが、その様な力があると思う。そういう意味では、私も超能力者だ」


 そんなこと言ったら、人類皆、超能力者じゃないか。


「……僕にもありますかね、超能力」


「ああ、頑張って見つけたまえ」


 何か勇気付けられる。


「でも、これは白鳥さんの前では言えないですね」


 だから、丁度良い機会なんだろうけど。


「ああ、言ったら呪われるな」


 呪いなんて信じてないくせに。


 小難しい事を言ったり、適当な事を言ったり……。


「……先輩って、よく分からない人ですね」


「ああ、私にもよく分からん」


 こんなことを笑って言うのだ。


 なんて、楽観的なんだろう……。

ここの台詞に鷲羽真琴の性格が現れてますね。

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