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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
あの空に捧げる回想録
146/221

私は意外と本気なのだがな

 その次の日、学校のコピー機を使わせてもらい、ポスターを三十枚刷り、外に貼りに行った。


 電柱や公園のトイレの壁、コンビニやスーパーの了解を得て店内にも貼らせてもらいながら、僕と先輩は青山東・西校区中を回った。


「あのスーパーにも貼ってもらいましょうよ」


「うむ。早速、交渉だ」


 店内は夕飯の買い物に来ている客で賑わっていた。


「兄ちゃん、肉のタイムセールだってよ」


「早く行かないと、オバちゃんたちに負けちまうぞ」


「ハンバーグ、ハンバーグ~」


「おう。分かった」


 僕達の横を兄弟で買い物に来ていた人が通り過ぎて行った。長男は僕と同い年くらいだ。


「交渉は終わったぞ、貼っても良いとのことだ。……どうした、橘後輩」


「あっ、いえ。今時、四人兄弟なんて珍しいなと思って」


 先輩が僕の視線を辿り、さっきの四人兄弟を見る。


「ああ、最近は少子化だからな。……そういえば、白鳥後輩も含め私達は皆、一人っ子だったな」


「そうですね」


 ついでに言えば、三人とも片親又は親なしである。


「私達はちょうど父と母がそれぞれ足りない。……それで、いっそ私の母上と君の父君が再婚してみるというのはどうだ。君の父君は中々、良い人だ。料理も上手い。きっと母上も気に入って下さる。ついでに、白鳥後輩も養子として引き取り、あの大きな家に皆で暮らす。白鳥後輩の方が誕生日が後だから、君の妹になる。……良いアイデアだと思わんかね、弟よ」


 自称超能力者の兄と自称黒魔導師の妹に挟まれるなんて、嫌過ぎる。


「……弟なんてやめて下さい。冗談が過ぎますよ」


「そうか。……私は意外と本気なのだがな」




 家に帰る頃には、すっかり暗くなっていた。


「おかえり~、宇宙。遅かったね~」


 父が帰っていたので、少し驚いた。いつもなら、まだ帰って来てない時間だった。


「ただいま。父さんは早かったね」


「うん。仕事が早めに終わってね。宇宙は何してたの?」


 僕は父にポスターを見せた。


「このポスターを貼ってたんだ。家の塀にも貼っていいよね?」


「勿論。……迷い猫か。何かのボランティア?」


「うん、まあ、そんなところ。白鳥さんが猫を拾ってきたんだよ」


「白鳥ちゃんが? へぇ、優しいんだねぇ」


 本当は使い魔にしようとしてるんだけどね。


「そういえば、ウチって動物飼ったことないよね」


「うん。僕がアレルギー持ちだからね。あんな可愛い猫ちゃんやワンちゃんに触れないのって苦痛だよ。肉球をぷにぷにしたいのに~。あっ、宇宙はアレルギー持ってないから、大丈夫だよ」


 肉球を押すと爪が出るんだよね。先輩はその爪で引っ掻かれてたし。


 そこで、ふと先輩の話を思い出した。僕の父と先輩のお母さんが再婚したら、という話だ。


「あのさ、もしもの話だよ。僕に兄弟がいたら、どんな感じだったと思う?」


「う~ん、そうだね~。……鷲羽君みたいなお兄さんがいたらいいかもね。あっ、白鳥ちゃんみたいな妹も可愛いなぁ」


 先輩と同じ様なことを言う。


「……僕達って、兄弟に見える?」


「う~ん。顔は全然似てないけどね~、アハハ」




 後に、先輩の提案を真面目に受け取っておけば良かったと後悔することになる。


「家族」として縛ってしまえば、彼が離れていくことはなかったはずだから。


 今も一緒にいられたはずだから。




 ちなみに、白鳥さんが拾ってきた猫は、その後程なくして飼い主が見つかった。


 近所に住む、一人暮らしのお婆さんであった。

何処かで見たような四人兄弟ですね。

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